2002年8月は1泊2日の夏の怖い童話・3

僕が生きてきた中で、顔と行動が一致する人は少ない。

綺麗な顔で綺麗な性格。知神君はそう言う人だ。知神天使という

ファンから賜った愛称のとおりだ。

(秀行の知神翼贔屓)

急に決めた1泊2日の旅行、ビジネス旅館で冷房全開の中にいる4人。


*とんでもなくざっくりの人物紹介。


徳浜秀行48歳、佐粧隆48歳、秀行の妻のつきこ31歳。

佐粧の言いつけで買い物に行ったのが、知神翼42歳。


秀行は和菓子職人で、腕がいい。何でもひととおり出来る人。

佐粧の音楽事務所ROSSKASTANIE(ロスカスターニエ)の

上級認定ギタリストでもある。


佐粧隆はやれば何でも最短でプロレベルに到達する人だが

本業の社長業(ロスカスターニエ音楽)とその所属バンドの

Adalheidis(アーデルハイト)のリーダーで今はいっぱいいっぱい。


つきこは某極小化粧品会社で割と何でもやらされている。

Adalheidis都内専属ヘア&メイクアップもつきこの仕事でもある。

佐粧隆には【姫】と呼ばれる。秀行からは【つきこさん】。

知神からは【つきちゃん】と呼ばれている。


知神翼は30過ぎて佐粧にスカウトされて今現在Adalheidisにいる。

この業界に来る前は、自動車整備士をしていた。

性格も顔もいい。怒りへの沸点が異様に低い可能性(知神談)


佐粧隆と知神翼はAdalheidis(4人)のメンバー。

他は末竹七五三次(E.ギター)と長尾伊佐次(E.ベース)。


この日の夜には(報告ありの)末竹も合流予定。

その上【僕の相談の話をするから聞いて、意見を欲しい】と佐粧隆。



「姫も秀行君も何で知神のこととなるとかばう方向にいくのかなあ。

まあ僕も知神を叱れない、だけど彼は叱られるようなことはしない。

イサさんは随分とひどいことするけれど、伝えられないな」


仕事で何があっても僕達とは直接は関係ない。

イサさんのことで知神君の話が薄れていくようなら、イサさんの話に

切り替えてしまえ。僕はその位は知神君が好きなのだ。


「どのくらい仲が悪いの?隆君とイサさん」


「あー、いつもは40%位嫌な気分で行動を共にしているよ。

僕が生きている限りは、でもお互いそれは続くんじゃないか?

60%になると無理だろうね。そうなったら厳しいだろうな」


「無理って何が?」


「一緒に仕事をすること。嫌が60%になると顔を見るのも辛い。

でも、どうにかしてごまかしながらやるんだろうなとは、思うけど」


一緒にいる仕事は嫌な様だ。僕は部外者だから【佐粧隆】の

【仕事に関して】は何も言えない。言ったらダメだ。

本当のところは僕はAdalheidisの人間関係なんて深くも浅くも知らない。


隆君が話してくれるだけのことを、積み重ねて思い浮かべるだけだ。


「ただいまー。アイスも牛乳も練乳もありますよー」


知神君が帰って来た。

「知神さんどうもありがとう」


「うん。あ、あ、袋重いよ?つきちゃんには渡せないよ」


「つきこさん、僕が持つよ」

僕は知神君から重いビニール袋を受け取った。


「秀行さん、ありがとう」


知神君はうふって笑ったようにお礼を言ってくれた様に見えた。


42歳の知神君だが、なかなか可愛いと思う。

(ちなみに秀行と佐粧隆は知神の6歳上だからお兄さん的年齢)

これは僕が1人っ子で弟が欲しかったからだと思う。

年齢で考えると中年だらけになってしまうけれど。


「知神さん、その女の子、旅館のお子さん?」


おや、つきこさんの昔の(写真の中の)姿に少しだけ似ている女の子だ。

1人、大人の中にいても大丈夫なところや(この部屋に身内はいない)

怖がらないところとかすごいね。小さい子が身の周りにはいないから

声のかけ方とか、よくわからない。


僕に笑いかけてくれたよ。淡いピンクのワンピースの3歳か4歳の子。


「この旅館の子ですよ。坂を1人で登るのが心細かったのかついて来て」


知神君も怖い気持ちがしたと言う。誘拐に思われたら困るよね。


隆君の顔が不思議でいっぱいになっている。


「なあに?僕には女の子が見えない。なんで3人には見えるの?

もしかして知神はスーパーから何か連れてきちゃったんじゃないの?」


知神君がスーパーの買い物帰りに連れて来たのは女児と思うが。

【何か連れて来た】って何を?


見えない人と見える人がいる物って、何?

まだ今日はスイカ食べていないけれど、こんな夏なのに?夕方なのに?


知神君が冷房の温度を28℃から25℃にした。

何だか段々寒くなって来た。


続く