僕が生きてきた中で、顔と行動が一致する人は少ない。
綺麗な顔で綺麗な性格。知神君はそう言う人だ。知神天使という
ファンから賜った愛称のとおりだ。
(秀行の知神翼贔屓)
急に決めた1泊2日の旅行、ビジネス旅館で冷房全開の中にいる4人。
*とんでもなくざっくりの人物紹介。
徳浜秀行48歳、佐粧隆48歳、秀行の妻のつきこ31歳。
佐粧の言いつけで買い物に行ったのが、知神翼42歳。
秀行は和菓子職人で、腕がいい。何でもひととおり出来る人。
佐粧の音楽事務所ROSSKASTANIE(ロスカスターニエ)の
上級認定ギタリストでもある。
佐粧隆はやれば何でも最短でプロレベルに到達する人だが
本業の社長業(ロスカスターニエ音楽)とその所属バンドの
Adalheidis(アーデルハイト)のリーダーで今はいっぱいいっぱい。
つきこは某極小化粧品会社で割と何でもやらされている。
Adalheidis都内専属ヘア&メイクアップもつきこの仕事でもある。
佐粧隆には【姫】と呼ばれる。秀行からは【つきこさん】。
知神からは【つきちゃん】と呼ばれている。
知神翼は30過ぎて佐粧にスカウトされて今現在Adalheidisにいる。
この業界に来る前は、自動車整備士をしていた。
性格も顔もいい。怒りへの沸点が異様に低い可能性(知神談)
佐粧隆と知神翼はAdalheidis(4人)のメンバー。
他は末竹七五三次(E.ギター)と長尾伊佐次(E.ベース)。
この日の夜には(報告ありの)末竹も合流予定。
その上【僕の相談の話をするから聞いて、意見を欲しい】と佐粧隆。
「姫も秀行君も何で知神のこととなるとかばう方向にいくのかなあ。
まあ僕も知神を叱れない、だけど彼は叱られるようなことはしない。
イサさんは随分とひどいことするけれど、伝えられないな」
仕事で何があっても僕達とは直接は関係ない。
イサさんのことで知神君の話が薄れていくようなら、イサさんの話に
切り替えてしまえ。僕はその位は知神君が好きなのだ。
「どのくらい仲が悪いの?隆君とイサさん」
「あー、いつもは40%位嫌な気分で行動を共にしているよ。
僕が生きている限りは、でもお互いそれは続くんじゃないか?
60%になると無理だろうね。そうなったら厳しいだろうな」
「無理って何が?」
「一緒に仕事をすること。嫌が60%になると顔を見るのも辛い。
でも、どうにかしてごまかしながらやるんだろうなとは、思うけど」
一緒にいる仕事は嫌な様だ。僕は部外者だから【佐粧隆】の
【仕事に関して】は何も言えない。言ったらダメだ。
本当のところは僕はAdalheidisの人間関係なんて深くも浅くも知らない。
隆君が話してくれるだけのことを、積み重ねて思い浮かべるだけだ。
「ただいまー。アイスも牛乳も練乳もありますよー」
知神君が帰って来た。
「知神さんどうもありがとう」
「うん。あ、あ、袋重いよ?つきちゃんには渡せないよ」
「つきこさん、僕が持つよ」
僕は知神君から重いビニール袋を受け取った。
「秀行さん、ありがとう」
知神君はうふって笑ったようにお礼を言ってくれた様に見えた。
42歳の知神君だが、なかなか可愛いと思う。
(ちなみに秀行と佐粧隆は知神の6歳上だからお兄さん的年齢)
これは僕が1人っ子で弟が欲しかったからだと思う。
年齢で考えると中年だらけになってしまうけれど。
「知神さん、その女の子、旅館のお子さん?」
おや、つきこさんの昔の(写真の中の)姿に少しだけ似ている女の子だ。
1人、大人の中にいても大丈夫なところや(この部屋に身内はいない)
怖がらないところとかすごいね。小さい子が身の周りにはいないから
声のかけ方とか、よくわからない。
僕に笑いかけてくれたよ。淡いピンクのワンピースの3歳か4歳の子。
「この旅館の子ですよ。坂を1人で登るのが心細かったのかついて来て」
知神君も怖い気持ちがしたと言う。誘拐に思われたら困るよね。
隆君の顔が不思議でいっぱいになっている。
「なあに?僕には女の子が見えない。なんで3人には見えるの?
もしかして知神はスーパーから何か連れてきちゃったんじゃないの?」
知神君がスーパーの買い物帰りに連れて来たのは女児と思うが。
【何か連れて来た】って何を?
見えない人と見える人がいる物って、何?
まだ今日はスイカ食べていないけれど、こんな夏なのに?夕方なのに?
知神君が冷房の温度を28℃から25℃にした。
何だか段々寒くなって来た。
続く