佐粧隆の相談に付き合う・つきこさんと16歳年上の僕
2002年8月は1泊2日の夏の怖い童話と知神君の失恋が来た
知神君が1番早く来た。1分遅れて佐粧隆。同じ車だからそう変わらない。
「つきちゃん、秀行さん、聞いて下さい。先週は、佐粧さんが
レンタカー屋さんにあった【幼稚園バス】を借りようとしたりして
側にいて疲れてしまいました。予約していたら今頃4人で幼稚園バスです」
「だって、バス旅行で可愛いバスに乗りたいし、知神君運転できるし。
幼稚園バスにしようかなーって思っただけなのに、知神君は怒るんだよ」
車は2台で行く。ミュージシャン運転のバスに全員で乗って、事故にでも
巻き込まれたら大変だ。本日は、僕車(秀行運転)と知神車。
知神君は我慢をしているが、本当はいつでも運転をしたいんだと思う。
ROSSKASTANIEの規則で、仕事関係はタクシーなのも何だか切ない。
(以前自動車整備士をしていた知神翼。車は大型免許全部【1種、2種】
あるらしい。トラックの映画とか今どきないけれどコンサートトラックの
11トン車を運転する知神君は、ツアーのDVDに収められている。
現在、2003年美容師国家試験受験予定。資格や級の取得が好きな美形)
知神車の助手席には佐粧隆が乗る。知神君は車を買う前には、候補には
真っ赤な車が浮かんだみたいだ。
だけど白い車にした知神君。理由は【運転したいから】らしい。
赤いのだと、誰にでも見つけられやすくて危ないかもしれない。
知神君の白い車は地味だ。良い車だが、広い駐車場では見失いそうだ。
隆君が「プロ意識の高い有名人のチョイス」と言っていた。確かに。
つきこさんは僕の車の助手席にいる。いなくならないか今でも心配。
東京を抜けた気がしないまま、1時間で着いた。
ビジネス旅館。隆君が1泊2日で連絡済み。温泉のお風呂が2つ。
【浴槽が大きくて5つカラン、5つシャワー】大浴場とは言えない大きさ。
【浴槽が家庭風呂よりは大きい位、2つカラン、2つシャワー】だ。
こじんまりとした静かな場所だ。
「お布団は各自敷いてね。部屋は男子部屋と女子部屋の2つ。
姫が男子部屋に来るのはいいけれど、僕達は女子部屋に行けません」
え?僕はつきこさんと一緒じゃないの?
「例外なとして、秀行君は姫の門番なので、女子部屋に滞在していい。
姫は門番の取り換えが出来るので、秀行君は言動に注意して下さい」
「はーい」
面倒なので従っておく。取り換えって誰にだよ。
「佐粧さん、ぼくが警護でつきちゃんの部屋に行くのはダメですか?」
「もう、もう、知神君は!普段はお利口なのにややこしい話をするね。
知神君が警護とか警備とか言い出すと、姫に対する僕の役がなくなる」
「佐粧さんはギタリストでしょう?」
つきこさん、その通りだよ。
「仕事から離れた役と言うか、フリがしたい。ヤギのこと見る人とか」
僕が思いもつかない程、疲れているんだね、隆君。
「舞踏家。踊りの大先生」
「違うのがいい」
「佐粧さんは佐粧流の師範です。違いません。せめて兼業して下さい」
知神君、ニッコリ笑って突き刺す様に、佐粧隆に言う。
確かに佐粧隆の元で稽古をして、知神君と末竹君は名取になった。
「じゃあ、手品師・佐粧さん」
つきこさんも厳しいねと思いながら楽しく聞く僕。
「姫、もうちょっと、あと一声優しくして。普段じゃないのがいい」
床から50㎝浮く人が何を言う。仕掛けも高いの買ったんじゃないか?
その位、マジシャンとしての動きが出来る佐粧隆(プロに見える)。
指も長く大きい手で、ハンカチからアライグマを出した。ぬいぐるみだけど。
「じゃあ、フランツさん」
「いい。ああ、ちょっと前なのに懐かしいね。じゃ今回はこれで」
僕もフランツと呼ばなくてはいけないのだろうか。
年齢から言うと48歳、若くは見えるが世間ではおじさんの年齢の佐粧隆。
フランツは外国の小学生のイメージなんだけれどな。制服のある私立校。
幼稚園の童話で読んだ。字が読めるようになった僕が最初に読んだ本。
絵本じゃない、字の本だった。
あの頃、幼稚園の先生が僕がその本を気に入っていることを
連絡帳か何かで母に伝えてくれた。
僕はフランツの出てくる本を買ってもらった。今はもうないけれど。
まあ、過去に【白薔薇】と言う別名義のバンドで隆君が使った名前だが。
つきこさんも僕も、白薔薇は手伝ったんだ。
「フランツさん、これからお話?」
つきこさんはノリがいい。もうフランツと呼んでいる。「さん」つけだが。
「そう。相談が色々とあるんだよ。2人には助けてもらうね」
「フランツ、僕受付行って来ますね」
知神君も抵抗ないんだね、フランツに。
「秀行君に言ったっけ?今日、末竹君が来る。食事の頃ね」
「夕食の時に?それは楽しみだ。僕、久しぶりなんだよ」
「僕もあまり話はしていない。稽古で顔見て音楽の話する位。
どうやら【いよいよ】なんだ。どっちに転んでも話したいみたい」
「あ、くみちゃんと?」
末竹君はくみちゃんとの結婚が近づいたのかもしれない。交際2年だ。
「先週、末竹家に交際の挨拶に行ったらしい」
「とうとうだね。末竹君頑張ったね」
「末竹はくみちゃんの家から挨拶に行ったんだ。
礼儀知らずと思われない様に。実は、くみちゃんのお父さんとお母さん
テレビを見ないんだって」
「今どき珍しいね。ニュースをテレビで見るのはラクなのにね」
「そう。ああ、もちろんそれ程僕らもテレビには出ていない。
でも、つけない時間があるとかじゃなくて、何もかもないから。
もちろん録画装置もない。末竹はレコーダーと大きめの受像機
一式、持って行ったみたいだよ。ツアーのDVDも」
「自分の仕事をわかってもらいたいよね」
「僕は面倒だなと思った。僕の場合ならば【音楽が仕事】で
信じてくれない親なら嫌だもん。収入は証明するけど」
「どうしたの?もしや隆君が最近、お付き合いしてる人がいて
その親に交際反対されたの?」
「ううん、いいの。今は末竹の話。あ、そうそう姫はちゃんと
持って来てくれたんだね、どうもありがとう。急に悪かったね」
「はい。こちらの部屋用に2つ」
「1つで足りると思うけれど2つ頼んで良かった」
トイレットペーパーだ。ここのビジネス旅館はトイレ紙がない。
受付で買うか、持ち込むかだ。持ち込んだ方が少しは柔らかいかもね。
シングル固めだと痛い様な【気がする】ので僕達はダブル派だ。
「わたしが1番使う量が多いですし。いいなー男の人。紙使わないから」
「明日、紙が減ってたら僕が大をしたということになる。恥ずかしい」
各部屋に洗面所とトイレがある。覗きに行かないから安心してくれ。
「我慢したらよくない。皆も温泉に入って気持ちよくなって
出るかもしれないしね」
続く