2002年 つきこ31歳秀行48歳の7月後半・休日の朝:6

隆君48歳 ミュージシャン、ロスカスターニエ音楽社長

2002年7月後半・久しぶりにつきこと秀行の家にいる週末。


秀行目線の日(48歳・和菓子の職人、ギタリスト、つきこの夫。たぶん体力が

半端なくある人。趣味が多いが同時進行させる男性)


きっかり20分、隆君は眠った。夏だからタオルケット1枚。栄養が足りた

植物みたいにすっきりとして起きた。麦茶をカップ2杯、飲んだ。


久しぶりだから何でも聞いてと言う隆君。昨日のお誕生会(知神君の)では

隆君としゃべっている時間は特になかった。


「末竹君、昨日は楽しそうだったね。やっぱり知神君の誕生日だから?」


久しぶりに会った末竹君は前と同じで大きな小鹿みたいだった。今まで本人から

聞いている話は「くみちゃん」と言う女性とお付き合いしていること。でもいくら

仲良くしているつきこさんも僕も、こちらからは何もたずねたりはしない。

だって、他の人の恋愛というのは本人から聞く方が、正しい。


「あー、なんか疲れたと思ったら。本人もいないし僕は今から知神君を

知神って言うし、末竹君を末竹呼びする。君をつけて話をしていると、その分

言葉を発するからか、ほんのちょっぴり少し疲れるね。この家では解除」


そうなのか?まあ僕は君をつけるけれど。つきこさんはさん付けだ。

それは変えなくていいから別にいいけれど。同じバンドだと気を使うのかな。


「で?末竹君、にこやかではあったけどね、僕達から見たら」


「そうお?何も変わらない様で、弟の結婚話がなくなったとか、くみちゃんとか」


ちょっと待て。その話は秘密なのでは?みんな知っているのか?

「それ、つきこさんと僕が聞いていい話?」


「ばかだなあ。聞かせられない話はしないよ。で、くみちゃん」


くみちゃんと言う名前に縁のある末竹君。【1人目のくみちゃん】とは3年前に

さようならしたらしい。3ヶ月のお付き合いでお別れしたらしい。

今は2人目の【くみちゃん】だ。偶然、同じ名前なのだが全く違う人。

たまたま、お付き合いした人がくみちゃんで、お別れした。その後

お付き合いを始めた人も、くみちゃん。ハッキリした名前は知らない。


「佐粧さん、くみちゃんに会ったことある?」


「会った。末竹ともう2年付き合っているから。ええと、3カ月前、いやもっと

春だったかな、ロスカスターニエ社長で呼ばれた、よくわかんないパーティーが

あって、巨大なレストランの中の一角だったんだけど、確かテーブル5つ位の規模の

パーティー。自分で取りに行って食べる方式。【つまみ食い】的なやつで」


つまみ食い?そんなパーティーがあるのだろうか。

「もしかして、食べ放題的なバイキングかビュッフェ?」


「そう。種類は多いんだよ。ビュッフェって言ってたけどお金払いながら食べたり

しなくていい、まさしく食べ放題。プレートもいくつでも使っていい方式。

他の人のことを考えると、たくさん取っちゃいけないタイプの食べ放題。

具体的に言うと、1つの種類が文庫本みたいなチェーフィングディッシュだった」


「佐粧さん、それは2人前しかない料理を10人以上で食べろと言う様な?」


「そうなの。姫にもわかるんだね。ずいぶん節約するパーティーなんだなって

内心は思った。贈った金額の1/20位は食べたいもん」


ドリンクがメインのパーティーだったのではないかと僕は思うのだが。


パーティーと言う名のお金集めなら安く済ませたいだろうに、何で中途半端に

料理を出すんだろう。あとお披露目で色々な事務所から綺麗なお兄さんとか

お姉さんとか来る場合もあるんだろうけれど、80年代後半じゃあるまいし

いまだに人脈作りの手段なのだろうか?

隆君(ロスカスターニエ音楽・社長)に気に入られたい人達も来たんだろう。

でも、その目論見が(あったのなら)大失敗だったかもしれない。



「会費出したから食べなきゃって【料理】を食べていたら両隣の個室からも

取りに来る人が多くて。ああ、これは50人近くの人間が分け合って食べるのか

って思った。種類は多かったけど肉が少ない。ビロビロした白い皮にひき肉が

耳かき1杯くらいのケチな奴は何回も食べた。いっぱいあったし。聞いてみたら

温かいお料理を常に提供するんだって。だから文庫本の量しか出てこないって。

だけど、チェーフィングディッシュだから下は温まるし、おかしいと思う」


ワンタン?スープがないのかな?肉のない水餃子?後で聞こう。

並べてある料理が1つにつき、文庫本位の量しかないとかウソすぎる。

でもそういうものなのか?ダメだ、嘘料理が知りたい。


隆君はウソはつかないから、基本的に本当だとしても何か情報は隠れているはず。

意図して隠しているわけじゃないのはよく理解しているので問題ない。

ただ、聞いたままを【そうなんだね】と、全て信用する僕達ではない。

隆君はこの家に来ると【賢い小学6年生位】になるのだ。面白いからいい。

音楽の事務所、バンド率多しの社長の苦労なんて考えたくもないけれど

凄腕の人なのだから、なかなかしんどいと思う。

疲れている時ほど僕達に会いに来ている気がするけれど。



「それで?そこで末竹君とくみちゃんにあったの?」


「僕が見つけて声をかけようと思ったら向こうから来た。くみちゃんは

末竹の好きそうな紺に白い水玉のワンピースで、アクセサリーは願掛けみたいな

赤紫と青と黄色の紐だけだったよ。料理は一か所にあるから会ってしまう」

【末竹君達は10名位の集まり】で、奥さんか彼女連れの人が多かった様子。


「くみちゃんて他県の人?」


「都内だよ。くみちゃんの実家は市。で、本人はA区の会社の寮に住んでいる。

寮にいるから部屋に人は呼べない、末竹も自宅に呼びたくない。そういうことで

仲良くやっているんだって」


「2年間、外で会ってるの?」


「そう。街には【車で入る休憩が出来るお部屋】もたくさんあるし、末竹は素敵で

綺麗なシティホテルに1週間2人で泊っても財布の心配はないのに。

2人共、清らかなんだって。それはもう、そうなんだろう。そうだとは思う。

末竹のおねえさんの言いつけだから末竹は守るよね」


隆君は【夢を見る様な優しい顔になって】斜め上を見ていた。