主要人物全員インプットの時期・佐粧隆の2

「こんばんは。佐粧さんももう着いていたんですね」

知神翼。Adalheidisギタリスト。細かい仕事が好きで、おじさんになっても30代前半の

【天使】のイメージが残ってしまっている。残っていてもいいものだと思う。


「ちーちゃん(知神のこと)、お久しぶり」

知神君は僕を見て、ちょっとびっくりしている。1週間会わなかっただけだよ。


「ぼくが火曜日にから揚げ作りに行ったの忘れましたか?」


「そうかもしれない。えー、でもあれは先週じゃなかった?」


火曜日に来てくれた?から揚げは美味しかったんだけど。今日は金曜日だ。仕事を

上手に終わらせて、車で来た。【秀行君の駐車場】は、広いのでとめやすい。


そういえばここ、昔僕は秀行君に「もう少し詰めちゃえば?(車が多くとめられて

お金も増えるからっていう意味)月極駐車場なんだから」と言ったことがある。

この幅で正しかったんだなと今日思った。秀行君は、何となく何だか正しい人だ。

ここは事故が全くない駐車場だ。


「火曜日は午前中に勉強することがあって、終わった後に鶏モモ肉の大きいパックを

買ってから、佐粧さんの家に行ったので、ぼく間違えていません」

なんか泣きそうなちーちゃん。わかるよわかる。僕がボケたかもしれないって心配を

しているんだよね。まだ平気だけど、月曜に気になることがあったから。


「思い出した。水曜日にお弁当で、タッパーに、チンしたから揚げ持って会社に行って

お昼にお肉が固くって、泣きそうだったんだ。いっぱい噛んで食べたら美味しくて

ご飯が進んだ。ちーちゃんが昨日作ってくれたときは柔らかかったなって思ったから。

【昨日】は、火曜日だったんだ。良かった、思い出せて」


インプラントが2本あるが、見た目わからないし不自由は何もない。元の歯が強いから

木の棒ならかじって小さく出来ると思う。(木刀はダメ)繊維の強い茎みたいなやつOK。

何を言いたいかと言うと、から揚げの固いのくらい大丈夫だ。僕がチンしすぎた。


「佐粧さんは、そんな油少ないの?って言ってましたね」

フライパンに油入れて作るから揚げだった。ちーちゃんは油は少ししか使わなかった。

油少ないと固くなると見た。まあ夕食の時は柔らかかったし、健康にもいいよね。


「たらこのほぐしたのはちゃんとご飯にまぜた。サラダは会社でドレッシングかけた」


僕がそう言うと、ちーちゃんはニーッて笑って、ピースサインをした。おじさんになった

ちーちゃんは頼もしい。ふと思ったんだけど、ピースって今の子にわかるのかな。


思い出した。ゼラチンとコーヒーでゼリーも作ってくれた。食べたのを忘れるのは

良くない。体にもよくない。ちーちゃんにも申し訳ないし。


「お茶菓子どうぞ。芋だよ。砂糖と生クリームが少し入ってる」


秀行君は僕に気を使ってくれている。実は僕が【ケーキはみんなで食べようよ】と

言ったので、ケーキに響かない重さも味も優しいお菓子をくれたのだ。僕だって姫が

帰宅後の夕食の後に食べたい。「佐粧さん、可愛くって美味しいね」って姫が言うのを

聞きたいからケーキ持って来たんだもん。30年間そういうのが好きでここにきている。


【家でご飯食べたい】って思うと電話して相談して、食事の材料を言われた通り前日

持って来るか、他のお土産を持参する。今日のご飯の材料はちーちゃんのターン。


おやつの芋のお菓子は、1個の大きさは串団子くらい。形も団子だ。丸めてある。


「久しぶりに紅茶にしようか。2人共、カフェインに強いし、まだ午後6時15分だ」


「お茶飲むだけで眠れなくなったりはしない。そうだね、今日は起きていようか」


「最近無糖の炭酸水ばかりだったから濃い紅茶いいですね。ぼくは今日確り休憩したから

夜は起きていたいですね」

久しぶりに泊めてもらうのだ。ナイスミドルも過ぎて渋いの二乗なのにお泊まり会だ。

(簡単に言うとくつろいだ後、帰るのが辛いお年頃なのだ。夜だからね)


紅茶は、会社に上等のティーバッグがあるし、水出し紅茶は火を使わないから僕も

家で茶葉の紅茶を飲める。となると、この家の緑茶で芋の和菓子っていうのも、いい。


「ごめえん、秀行君、緑茶にしてください。そのお団子、和菓子でしょ?」

「和菓子と言えば和菓子かな。サツマイモが固まってコロンとしているだけ」


和菓子職人の秀行君は【サツマイモが固まってコロン】とか言うが、そういうふうに

作ったのは秀行君だ。有名なコンテストの金メダルを5個持っている。他にもそれ以上。

まあ、この家の物は僕の口に合うから遊びに来る。来ても怒られない大事な場所。



「ただいま帰りました」



秀行君は玄関に【僕の姫で秀行君のつきこさんで知神君のつきちゃん】を迎えに出た。


姫が3人いたら良かったのにね。そうなったらたぶんきっと秀行君が選んだ人がまた

【僕の姫】で知神君の【つきちゃん】になるだけだから意味はない。僕のは「if」を

考えているのではなく、想像だ。実生活、特に仕事には響かせない僕だけの物語。



ここから2002年へ。現在を語ると不都合があるので2002年の4月に戻ります。

僕は全力で戻るけれど、秀行君に語り手は交代する。ちーちゃんは心内描写が長すぎ。

次は「2002年4月」とタイトルに入れるね。