隆君が実家にお土産を持って行ったときの話
1999年6月30日(水)
つきこさんお帰りつきこさんお帰りーつきこさん帰宅
「こんばんは。佐粧さん、秀行さん。お邪魔します」
「ええっ。つきこさんと僕の家だよ」
僕はいつ、よその家に来ちゃったんだろうか。
「間違えた。ただいま帰りました」
「いいんだよ、姫。僕の家かもしれないし」
そんな事実はないんだ。つきこさんはくたびれているだけだ。
美味しい夕食を出す。僕は台所に向かった。
「隆君は冷やし中華1人前でいいのかな?麺は多めに用意があるよ」
「冷やし中華始まったんだ。嬉しいな。2人前って言ったら軽蔑する?」
全く。いまさらってやつだ。
「いや。僕も1つ半使う。つきこさんもだ」
「そうね、じゃあ2人前頂きます。それ以上はケーキもあるしー」
「この麺は少し他の麺より量が少ないんだ」
「モヤモヤする。やっぱり2人前半下さい」
つきこさんは顔を洗って足も洗ってワンピースになって来た。
被って着られるものだが、長袖で足が隠れる。それにエプロン。
エプロンで全て許せるタイプのエプロンだ。
「つきこさん、隆君からケーキ。僕の誕生日だって」
「佐粧さんどうもありがとう。もしかして2回目の誕生日は
何か意味があるのですか?」
「そう。実はその通りで、ろうそくに心を込めた」
「何があるの?やだー。僕がいやー」
台所から叫んだ。本当にいやだ。何があるんだろう。
「じゃあ、90の数字ろうそくはやめておこう」
2回誕生会って2倍の年を取るの?
「ほしくないけれど、そのろうそく後で僕にも見せてー」
「それは後でやるとして、僕の実家。銘菓の小箱を3つ持って行った。
父、母、妹に1つずつ。父も母も実は食べないから3つ妹に行く。
あとは着物の端切れで作った綺麗なブックカバーとか、秀行君に
教わった紫の砂糖菓子とか」
「あのお店にはいい思い出があるからね」
僕が会社から出向(国内留学みたいなものだった)したとき行った。
「それはきっと美味しいものだね。僕の分も買って来て良かったよ。
栄美子がお土産を喜んでくれなくてもいい。だって僕の自己満足だから。
でも僕が栄美子に「はい」って渡したら、いくつもあるお土産を
ゴミ袋に入れて、2階に持って行っちゃった。すぐに降りてきて僕に
【ブックカバー使いたいから、本買うからおこづかい下さい】って
言うんだ。「とってつけた」ってこういうこと?って感じたよ。
それでいくら渡せばいいか、少し考えたの。栄美子が日常に使う
お金には困っていないことは知っていたから」
本来の栄美子さんは働き者だが。今は実家で休んでいる。
想像を絶するような暮らしから戻って来た栄美子さんはあとから
あとから、体が故障しているらしい。寝たり起きたり散歩したり。
お母さんと買い物に行けば日用品には不足はないだろうけれど
今はなかなか外には出られないのかな。お母さんに言えば何でも
買ってきてもらえそうだけれど、38歳だと遠慮があるんだろう。