3人のお誕生日おめでとう・99年つきこさんと僕

夕食は佐粧隆がやってきた


1999年6月30日(水)小ぶりなホールケーキ


スーツにネクタイ。細くなったのかな?サスペンダー。

後ろから見たらスリムな会社員だが、前を見たらもうダメだ。


車をとめてすぐに来られるこの家は良い場所なのか?

隆君はただものではない雰囲気があるから。



「こんばんは。ただいま」


ただいまは違うとかもういちいち言わないことにした。


「はい。いらっしゃい。ケーキだね。いつもどうもありがとう」


いらっしゃいと言えばいいのだ。それだけ。


「旅先の誕生日会じゃ満足できないんだよ。ケーキ食べたい。

もう1回やろう。6月27日、秀行君誕生日おめでとう45歳」


「2回目ありがとう。隆君と同じく45歳になりました」


「姫よりさらに年を取った感想は?」


「すぐ追いついてくれるから別にー。去年あたりから気持ちが

落ちついてね。前はつきこさんと【満年齢】で、少しの期間でも

差が広がるのが辛かった。実家ではいまさらって言われていたよ」


同じ年どうしの早生まれで1学年上になったとか、そういうこと

ではない。つきこさんが22歳の時に結婚した僕は38歳。


僕は6月生まれでも、つきこさんは12月生まれ。

半年間はほぼ歳の差が【もう1個】あるのと同じ、満年齢。

隆君はニタニタした。腹の立つ様な笑いではないが。歯が白い。


「関西で誕生日に言ったことと同じだね。でも【気にしていない】

ということはやっぱり気にしているのかな?【別にー】と言っちゃう

のは、真実はどういう気持ちなんだろう」


「前は気持ちが落ち込んだんだ。そういうことはもうないよ」


「僕は実家行って落ち込んだ。ケーキ冷蔵庫に入る?」


「うん。飲み物、牛乳と麦茶と後は温かい物。何がいい?」


「麦茶下さい」


1杯目はお出しする。大きなマグカップで。


「どうぞ。冷蔵庫から勝手に飲んで」


下さいと言われて毎回こたえるのも、面倒だなと思って。


「僕は実家にお土産をすぐに置きに行ったんだ」


「そうみたいだね。ご家族の好きなお菓子があったんだっけ?」


「妹が、あの土地の銘菓が大好きで【100個でもたべれちゃう】って

小学生の頃に、食べるたびにそう言ってたんだよ。

【大きい箱がいい、何箱も食べられたら。しあわせ】とか言う位好きで。

母に縁があったのか年に2回位、関西の方がお土産にくれたんだ」


隆君の母親はすごい。ピアノ留学、コンクール上位、音大受験の請負人を

する腕前のピアノの先生。隆君も母親に2歳から数年間習ったとか。

既にピアノの先生をやっている人も教える先生だ。すごい。


「優しいお兄さんというのは、妹に自分の分も分けてあげるの?」


僕は1人っ子だったから、おやつは渡された物を全部食べていた。


「5個ずつのところを僕は2個にして3個あげた。でも見つめて

くるからね、5個あげたよ。僕はチョコ系の物は全部食べていたし。

ああ、栄美子はチョコより焼き菓子が好きだったから、そこで

奪い合うとかはないよ」


2個あげて、やっぱり5個あげたとかよく覚えてるな。そうなると

焼き菓子は全部、栄美子さんにあげていたのか。

お月謝と別に【〇区のコンクール上位のお礼】等お菓子を持ってくる

ピアノの生徒さんの親。


子供時代の隆君の家には、たくさんの菓子の箱があったのだ。


あ、つきこさんが帰って来た。