D. 3人でお昼ご飯を食べることになった・末竹知神佐粧の昼

1998年4月15日(水)


佐粧さんがもうすぐ来る。


僕達は警備室に行くエレベーターの中でもシュミレーションを

していた。前々から思っていた、外食(出前)の支払いのこと。


今日は末竹君とぼくが2人で【出前してくれた人】に会う。

それは佐粧さんよりも先だ。だから支払いは2人で先に出来る。


以前にも末竹君と話していた【佐粧さんより早く】食事の代金を

支払うことのできる、絶好のチャンス。


「知神君、今回は絶好のタイミング。レジの人に何も言わないで

すんじゃうし。僕は小銭入れを持っている」


「メニュー見て、佐粧さんの言ったとおりに計算した。注文が

多少違っていても平気。その場ですぐわかるよ。末竹君の小銭

もありがたい。ぼくも小銭は割とあるけれど財布に入ってる」


「2つ持つと面倒だと思うでしょ。そうでもなかった。小銭だけで

お買い物できたりするんだよ。硬貨の限度は20枚だけどね」


それはもはや、大銭、いや、大金じゃないかな。


「どうも、アーデルハイトです」


末竹君が、漫才師さんみたいだねと、クスッと笑う。

僕達は警備室に入った。出前の男の子が警備室正面に到着。


警備室のテーブルにうどんやご飯を置いてくれたあとに、この

社屋に置いてある、岡持ちの使い方を教えてくれた。

今日は3個残っていた。ROSSKASTANIE社は岡持ちを使えます。


「あの、親には邪魔するな、ダメだって言われてるんだけどもし

良かったら、握手して下さい」


僕と末竹君は握手した。ニッコリ笑った男の子は次の瞬間衝撃的な

ことを言った。


「お食事代金は頂いております。どんぶりは取りに参ります。

どうもありがとうございましたー」


お食事代金て。末竹君とぼくはまたも払えなかった。白い封筒に

自分の分を入れて渡すしかない。これからがチャレンジの時間だ。


「佐粧さんはー、前もって払っておくのかねー」


「だとしたら、今日はもう、そばうどん屋さんに1回行ってるって

ことになるよ?先にいくらか渡す方式だと誤差が出ないのかな。

とにかく、ぼくには難しい技だ」


「お店の常連じゃないと、頼み事って出来ないよねー」


岡持ちは無事運べた。中の【昼食】も無事だった。岡持ち持つのは

上手く行ったけれど。


デルハの部屋に戻ると佐粧さんが来ていた。

末竹君が、「はい」と白い封筒を佐粧さんに渡す。


「なあに?」と佐粧さん。

「お昼代です」と、ぼく。