僕はつきこさんと一緒に僕の休日を終えたい

1998年4月15日(水)今はもう夕食の後。子供っぽさ全開


【お内裏様とお雛様の夕食後はどちらかが大人ではない】


つきこさんが言うには僕は隆君よりかっこいいらしい。

佐粧隆よりも、僕はカッコイイのか。


つきこさんにとって、そうなのならば嬉しくなっちゃう。

つきこさんにだけそう見えていてもありがたく思う。


考えていることがおかしいのは承知なのだ。今は別に社会の

人々と、つながっているわけではない【休日】で少し憂鬱。


「秀行さんは鏡の前でにやけるような人じゃないからなー。

会社でも身だしなみに気を使う人が結構いるけれど、んー」


「女性?」


「男性。後輩。ニキビを気にしたり、髭剃り負けの消毒をしたり。

それはとてもいいことだけれど、コットンねだられたりもする」


つきこさんの部署に2人男性が入ったんだっけ。20代前半。

寺井部長のそばにある救急箱を使いたくないのはわかる。


「消毒薬は新しいの貸したわたしがバカだから、小さいものだし

1つはもうあきらめた。なくなったから【もうないよ、自分で用意

してね】って。不満そうで面白かった。何で【貸して】って言うのに

返してくれないんだろうねー。皮膚科行ったらって言っちゃった」


たかられているのだろうか。細かい物でもずっとだったら辛いな。

優しい先輩ってことでつきこさんに甘えているのなら、ちょっと

考えがある。家で色々してから会社に行けと言いたいのだが、日に

数度鏡を見たいのだろう。顔だから痒かったり、血がにじんでいたら

嫌なのはわかるけれど。市販の消毒薬より医師に行ってほしい。


「コットンは?大丈夫?」


(僕はつきこさんの話をよく聞いている。コットンもねだられる

って、さっき言っていたもの)


「1回自分のをあげたけれど次は断った。そうしたらメイクボックス

指さすから、お客様のものを色々預かっているって言いました」


その男性も薄々わかっている筈。Adalheidisのことを。

佐粧隆に弁償するのはイヤなんだろう。謝るとか怖いし。隆君は

新しいの買ってくれればいいよ、って案外言いそう。でも高そう。

デパートのっぽい。本当はドラッグストアの1番高い物だが。

あとは、ティッシュペーパーも高級だった。ドラッグストアの。


「それで考えたの。秀行さんはニキビ出来ないし、洋菓子もバターも

ジャムもお肉も何でも食べるし、前から好き嫌いないのいいなって

思っていたの。代謝が良くて素敵。肌もカサカサにならないし」


確かに僕は最近書いていないだけで、以前からかなり朝は大食いだ。


「確かに吹き出物は出来にくいかもしれないけれど。脂っぽく

なることはあるよ。午後だね。昼休憩の時、1回顔を洗う」


「清潔だもの、秀行さんは。わたしは秀行さんの顔に、薄くサラダ油が

ついちゃってテラテラ光っていても、カッコイイと思う」


なんか変なこと言っているつきこさん、だが可愛い。


「わたしが中学3年の時から、秀行さん美形で変わっていないし」


つきこさん、つきこさん、それは違うと思うけれど、服の

サイズは変わっていないのは確か。


「僕は新婚6年目で、毎日楽しいよ。つきこさんがいてくれるし」


「うん。いるだけに近いね。眉毛もちゃんと出来ていないし」


洗顔後だから、目頭の眉が6㎜位ない。怪我していなくて良かった。

僕は気が付くのが遅かったんだけれど、つきこさんは眉を描いて

いたんだ。ものすごく自然だったからだよ。わからなかったもの。


「ご飯も、掃除も、お買い物も、つきこさんは何でもしてくれる」



そのときつきこさんはポストにあったと何かを取り出した。


つきこさんは【〇町1丁目のハンサム】なるものを僕に見せた。

まだこんな暇なことしている人がいるんだ。


僕が確実に言えるのは、2年に1回はポストに入ってくること、

以前の作成者ではないということ位だ。そしてこれはわら半紙に近い

紙で、1色刷りで【つきこさんはかかわっていない】のだ。


「どうしよう、秀行さんの宣伝みたいで悲しい。皆が知って

かっこいいとか美形とか、ギターがプロな和菓子屋さんて知ったら

わたしどうしよう」


まずはつきこさんを落ちつかせて、内容をよく見なくては。