1997年3月7日(金)1週間後はもうコンサート
「わー、イチゴに練乳。秀行さんありがとう」
「少し食べて行かないと休憩までどのくらい
かかるかわからないからね。隆君が決めるから」
これから着替えてつきこさん「も」ROSSKASTANIE
内の、稽古場に行く。ベースを背負って。
僕は苺を1パック、へたを取ってつぶして、練乳と
牛乳をかけておいた。つきこさんが会社から帰宅後
すぐにおやつを食べられる様に。
僕は夕方5時に帰ってこられるから大丈夫。
「つきこさん、またその服?似合うけれど。
(可愛いところが消えちゃうよ、見事に消えちゃう)」
厚地の(木綿みたいだ)首まで隠す体の線が見えない
膝丈のワンピースの様な、【細い台形の袋】にも見える
黒い服に、同じ様なパンツ、ユニセックスな靴。
「動きやすいから稽古着にしちゃった。色々と
下手くそだからせめて掃除では機敏に動かないと」
掃除までして稽古終了。佐粧隆も掃除をするが
それはどうも趣味の様なもので巻き込まれたら2時間は
かかる。眠る時間が減るのはみんないやだからね。
つきこさん、顔が半分隠れる帽子。つばが大きい。
小柄な男子みたい。高校入学時の僕位か。
それもありだと思えてきた。うん、可愛い。
この間、ナルツイッセに「女性がいる」と驚かれ、
その後も頭は深く下げても声を出さなかったので
つきこさんは【小柄な男性】と彼らに思われた。
そういえばつきこさん、先月髪も短くしちゃったし。
いつもだと調子にのるのは佐粧隆だが、静かだった。
面白がって、知神翼君が色々なウソを、ナルツイッセ
に話していた(2人。コンサートの助っ人に来てくれる。
ナルツイッセのギターのガリ君、ドラムスのマンゴー君)
知神君のうそ。
彼は(つきこさんのこと)普段は会社員なんだよ。
ギターの中級認定を持っていて、佐粧さんやHardyと
知り合いなんだ。
真実にウソが1つ。知神君は怪しく黒い翼を隠していそう。
でも、つきこさんと僕は、以前にも彼らと会っているし
何か言われるかと思っていたんだけれどな。
知神君が、つきこさんと僕に向けられた視線を外した感じ。
それはそれで、白き翼の人なのかも。
別につきこさんも僕も、ROSSKASTANIEで隠すことは
特にないと思うが、一応今回の練習中は他人です。
ややこしい気がする。知神君の仕業になるのか?
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さて、金曜夜の稽古場で
あれ?隆君がいない。
「社長には内線が入って、執務室に戻っています。
そのうち戻ると思いますが。本日もどうぞよろしく」
末竹君からそう告げられると、6人は動き出した。
15分位たったころ、隆君が入って来た。
なんとなく不自然な笑みに見える。辛いことでも
あったのだろうか?
「遅れてごめんなさい。始めましょう。あっ」
隆君のギターのストラップが切れた。