2023年(令和5年)3月27日(月)
見た目は変わっても何も変わらない物ってある
僕達は(つきこさんの病院の帰り)甘いものを
【大きな駅で】食べて帰って来た。
まだ午後1時。
外出から帰ると手洗いうがい。ずっと薬用せっけんを
使っている。外にはまだ、アルコール消毒液があるし
何となく、指紋がなくなってきたような気がする。
つきこさんと僕は、今はなんとか元気だ。腰痛や
疲れは多少あるものの、大きな持病はない。
僕達が元気なうちにこのご時世が終わってほしい。
リーン・ベルベルベルベル
佐粧隆だ。ナンバーディスプレイ。番号は脳に記憶済。
この着信音(家の電話)は、3台目だけれど変わらず。
「僕出るね」
「お茶入れておきますねー」
人間の人生の長さから言うと、腐れ縁とかではなく
隆君とは、相当上手く続いている気がする。
だけど、どちらかが泣いたら【ごめんね】という
関係が薄気味悪い年齢になった。
今はお互いを気遣うから心臓には優しい付き合い。
だけど30年位前は僕はめそめそ泣いていたんだよ。
「もしもし秀行君?どこか行ってた?」
「つきこさんの病院に迎えに行った帰りに、隆君の
駐車場にとめさせてもらって、おやつ食べてきた」
「ずるいー。いや、ひめはどうなの?」
「日帰り手術したでしょ?切っておできをとって
縫った先生は上手だったよ。その後はやっぱり
日焼けとか防いだりしないとダメみたいだね」
少しでも、つきこさんの傷跡を薄くするための話。
「傷跡がシミみたいになるとかあるの?」
「25歳じゃないからね。体質だってあるし。半年から
1年はどうなるかはわからないんだって」
僕はもちろん隆君に何を伝えていいかは、事前に
つきこさんに聞いた。つきこさんは、下手に隠さず
知っておいてもらった方がいいという考え。
僕も。最初は「え?」って思ったけれど、毎回毎回
説明したり「痛い?」と聞かれたり「かわいそう」とか
言われないためにも、隠さない方がいい。
知らせていい人には言うべきだと思った。
「僕はまた4月の春の病がきたのかもしれない」
2年に1回位、40代の時も【佐粧隆の病】はあったかも。
とにかく惚れっぽくなる。1回か2回はその女性と
お茶は出来る。しかし、その後は振られる。
「その女性はいくつ位の人?場合によっては危険だ」
18歳位だと、佐粧隆はエロジジイになってしまう。
「56歳か7歳。お子さんは成人済みで他県にいる。
40代で離婚している看護師さん。ただ、音楽の趣味が
全く合わないのと、食べるものの好みが違うのと、
僕の自宅に来たいって言い始めたから、悩んでる」
ギタリストでROSSKASTANIE社長の隆君と、音楽の
趣味が合わなければそれだけでもお互い辛いかも。
だって、家のピアノで作詞作曲するからね、隆君。
食の好みか。自宅に来てほしくないんだ?
「僕は年2回位しかお酒は飲まない。その女性は
疲れとかあるのはわかるよ、居酒屋が好きで、ビールや
甘い炭酸の焼酎?をいっぱい缶で買って来て飲むんだよ。
看護師さんも外食ダメとかあるんじゃない?」
「外食ダメって、たくさんのお店は開いているのにね。
病院にもよるんだろうけれど。その人お酒は強いんだ?」
「時間作って会うんだから座りたいし。でも空気が
いいからって、公園のベンチでその女性だけ飲んでる。
僕はお茶を買って飲む。帰りにお水を彼女に渡す。
日本酒1升とかじゃないけれど、9%アルコール10本は
休みの前でも多くない?」
それは、隆君に興味がなくて、缶のお酒が好きなんだよ。
「最初の出会いはどこ?」
「もう別れた。実は2回目で振られた。僕にはたぶん
お見合いも、恋愛も、一目惚れもダメなんだろうな。
姫と秀行君はもう50年位一緒でしょ?おかしいよ」
冗談じゃない。まだまだだよ。目指してはいるけれど。
「花粉症のない僕にとって、この春の恋と言うのは
何事もなく終わればそれでいいと思うしかないのかな」
60代後半でとにもかくにも女性と自然に?知り合える
チャンスのある人はなかなかいないと思うよ。隆君は
紳士だし。いまどきフレンチや、まわらない寿司に
デートで女性を連れて行ける、お財布の大きいスターだ。
「何かいいことあるよ。老けこんじゃダメだよ」
「うん。そういえばこの間の合同練習で、ナルツイッセが
【姉さんはこないの?】って言うから、君達と同じ年か
年下に何を言うんだよ、って怒っておいた。そうしたら
違うんだって」
確かにつきこさんはベースを始めた日から(ギターも)
コツコツやって来て、何だか格好がついてきたので
ベースが脱退した隆君のバンドの練習に呼ばれている。
本人曰く力不足なれど下手なりにお役にたてたら、と。
昨日や今日始めたわけじゃないから、卑下しないでいい。
そしてその稽古には僕も行くのだ。
だって、つきこさんの周りはみんな男性だから心配で。
「ナルツイッセが何なの?今週行くけれど」
あの稽古場は換気はバッチリ。他の人との距離5mはある。
「【Hardy(秀行)と佐粧社長の間にいて、皆に
優しいから、ねえさんじゃなくて、あねさんかな】
だって。あの子達も50代なのにお坊ちゃまだからか
バカだよねー。姐さんて最近は書くよね」
「知神君と末竹君も大変だね」
「ナルツイッセはROSSKASTANIEを20代から辞めなかった
可愛い後輩なんじゃない?バカなことに付き合ってるし。
知神組と末竹組があって、今のところ知神組は雑巾がけ
やったりしてる。末竹組は買い物。つかいっぱしり」
50代の遊びにしてはハード過ぎない?体力あるなあ。
「じゃあ、次はつきこさん、ベース持って、僕ギター」
「うんうん。道明寺食べたい」
はいはい。