*2023/3/24 21:47 少し直しました。
1997年3月1日(土)練習後、おかき作りの予定だが。
ROSSKASTANIEの稽古場。
前髪が伸びてきたのか、知神君が首を振ったり
手で髪をかきあげたりしている。
「知神君、髪少し切ればいいのに。僕はバナナと
さくらんぼの髪留め使ってるけど。普通のヘアピンなら
あげるよ。使う?イライラすると良くないからね」
末竹君て優しいね。
似合ってはいるんだけれど、顔のある(ニコニコ顔の
バナナとさくらんぼ)髪留めは面白い。練習中の小物は
個性的だ。
「ありがとう。ぼくは普通のヘアピンだとすべって
失くしちゃうんだよ。髪がごわごわなのかも」
つきこさんは頭の後ろに耳があるのか、知神君に
「ダッカール」という髪用のクリップみたいなのを
3つ渡した。見た目より力強い、緑のやつ。
「つきこちゃんありがとう」
この稽古場には鏡があるし、知神君は器用だから
鏡を見ながら上手に髪を固定して来た。
「今度、変化してきた頭に何が必要か教えてもらわないと
ダメかな。今のぼくは静電気で髪も立つし」
知神君、そんなこと言うと危ないよ。奥にいる人が
今、どこから出したか下敷きを持って寄って来たよ。
その人の名は、佐粧隆リーダー。
「わあああああ、知神君の頭後ろ半分たっちゃった。
久しぶりにこういうの見たよ。なんだか楽しいねー。
今日、帰りに髪にいいワックスあげるね。無香料なの」
「ありがとうございます」
このリーダーと、うまくやっているなんて。
知神君は【繊細】に見えるだけで心は強くて太そうだ。
「つきこさんそれはなあに?」
「佐粧さんが玩具を用意してくれてね、遊んでるの。
可愛い動物と大きいお家。中も面白い。ベリーのパイが
隙間に引っかかってたから、取り出して食卓に置いた」
4人(佐粧、末竹、知神、僕・秀行)の死角で遊ぶ
26歳の女性。ドールハウスは楽しいのかも。小物を
揃えていくのに莫大な時間と根気が必要そうだけれど。
「実はそれさあ、僕の自宅に置いておくと眠れなくなる。
この稽古場の、鍵のある戸棚に入れておくのが1番いい。
1年に2回位出すのが丁度いいね」
佐粧隆本人所持ですか。いい趣味だと思うな。
「何で眠れなくなるの?自宅で声をかけて可愛がれば
いいのに。おはよう、元気かなとか」
まあ、末竹君の言うこともわかる。
「そうだけど、お腹すいていないかとか気になる。
うるさくないだろうかとか、悩む。家でも楽器弾くし。
後は、夜中にチョコとか食べられないし。怖いでしょ」
「なんで?ドールハウスの玄関かふた閉じれば?
怖いっていうのは夜中にものを食べる自分が、やましい
からじゃないの?お人形は可愛いじゃないか」
末竹君がそういうと、隆君は「だってー」という。
「可愛いけれど、何か気配がするんだもん」
「気配?いいじゃん、さみしくなくって。動いたり
いたずらはしないんでしょ?だったらいいと思う」
僕達は真面目に練習を始めた。
つきこさんはどうやら、動物さんのお家のお片付け。
玩具で遊んでいるわけではないみたいだ。佐粧隆に
いつの間にか、頼まれたのかも。
台所のお鍋が全部落ちていたり、2階のベッドがずれて
いたみたいだ。ごくたまに地震が来るからだと思う。
あとは、ダンスの激しい稽古で床を踏み鳴らすらしい。
「これはね、何となく衝動買いしたんだ。7年位前に。
さみしいのは嫌だったから、寝室に置いていたんだ。
窓開けたら、お人形が可愛いし。でもそのうちにね、
怪奇現象が起こったんだよね」
「隆君、怪奇現象とは何ぞや?」
つきこさんが今触れていたんだから気になるよ。
「結局、怪奇現象じゃなかったんだけど、朝起きると
中のお人形が倒れていたり、台所用具が落ちてたり。
自分がウロウロ寝室を歩き回るから。僕も踊ってたし」
そういうことだと思う。
さて僕は、おかき作りを始める時間だ。
ラップした餅(乾燥したもの)が置いてある稽古場。
珍しいと思う。
その餅を持って、給湯室に行って来ます。