知神君だって不安な95年12月・つきこさんと16歳年上の僕

11月27日(月)怪しい人から電話来たー。


「昨日の辻堂君の話、もう終わった。早いよ。知神がね

一緒に行ってくれてね。とにかく行くから。何か食事

あまってない?トーストと牛乳でもいいの」


昨日の今日で早い。Q工業高校の知神君のかなり後輩だが

ギターの腕はどうだったのかな?


「秀行さん、スパゲティもミートソースもたっぷりあるね。

サラダを足しましょう。昨日買った葉っぱもあるし」


「つきこさん本当にごめんね。僕は2人でお食事したいのに」


「秀行さんはお友達からいっぱい色々なお話聞いて、笑ってる

方がいいよ。みんな明日休みじゃないしきっと泊まらないし。

辻堂先生がホッとした話なら聞きたいもの」



隆君:「ただいまー」


知神君:「いつもいつも急にお邪魔して申し訳ありません」


スパゲティが出来るまで甘みを抑えた生姜湯を出した。


「昨日、早速辻堂君に今日行くって行ったんだ。1日教員の

ふりしたかったんだけどさ、非常勤がいるんだって。3年生の

先生なのに病気じゃなくて噂ではずる休みらしい。週に1回位」


「そんな先生もいるんだ」


だからね、僕は事務の人の格好をしたの。知神君は帽子を深く

被って、辻堂君の最初の頃の卒業生のふりしてさ、辻堂君も

のんびりしてるようで大胆、放課後彼だけ音楽室に残した。


「じゃあ、うおおおお、知神先輩だああとか、KYOじゃないの?

とか、そういう騒ぎはおこらなかったんだね。なんかホッとした」


知神君がバレないのは母校となじんでいたからなのか?


「辻堂君て、案外策士。廊下の横の鍵とか持ってて、時間通りに

正面玄関行ったら、僕等は生徒から見えない道を開けてくれた」


「ぼくもびっくりしました。それだけで行って良かったかも」


いやだなー。知神君、騙されやすそう。


「結局彼は自動車整備の養成校に入るみたいだよ。彼がやりたい

二輪自動車整備士って、自動車整備の世界の1つみたいだし」


「行けるなら行った方がいいってぼくがいったんです。僕は

実務経験とかで、上の学校出た人より遅れましたし、専門の

学校は、設備もある。親も進めてる。行かないと勿体ない」


本当は知神君も行きたかったんじゃないかと思う。

つきこさんも口を結び固い顔をしているが、そう考えている様子。


「彼は知神君と事務の小父さんみたいな人の正体は知ってた?」


「見りゃわかるのが軽音楽部じゃない?まあ洋楽しか知らない子も

いるかもしれないけれど。ここで辻堂君が【今日ここに来た人や

起こったことを、誰かに言っても誰も信用しない。君はウソつきって

言われるだけ。黙っておくんだよ。ただしこれは真実】とか、上手いね」


「ぼくもあんな先生になら、どこかの普通科で国語習いたかったです」


じゃあ、彼の進路は決まったんだ。


「3多摩地区にバイクショップがあって、彼のお父さんと仲の悪い

弟、叔父さんだね。そこに即就職したかったみたいだけれど。

知神君に例え叔父さんがいい人でもしばらくはずっと給料安いから

養成学校で取れる資格とか学科免除の資格とか取るといいよって」


「ぼくみたいに寮に入って、先輩から教わりながらとか勉強会や

研修とか、今なくなって来たし。早めに上の資格持って叔父さんの

ところで勉強しておけば、良い場所に転職出来ますし」


知神君は整備士からギタリストに転職して良かったのかな。


「肝心のギターの腕だけど、まあそれはそのあれでね。

辻堂君は教員の忘年会があったらカラオケしない方がいいね」


「まだまだこれから上手くなりますよ。ただあの子がバイクを

好きなら、ぼくはいつかメーカーに行ってほしいな。指は長くて

細くて器用そうだったから」


あ、ギターへの期待じゃないんだ。でもまあとにかく辻堂君は

彼の気持ちを聞いて、進路を助けたわけだ。願書は1月末まで

間に合うらしい。実績がある良い専門学校だとか。



「知神がギター弾いたらうっとりして眺めてたんだよ。そこは

可愛いなと思ったし、実は、まだうまくなるとは思うの。でもねー

Q高からはプロが出ないんだよね。オーディションにも来ない」


「佐粧さん、12月のお話、明日わたしが伺いましょうか」


「姫、それは僕が明日姫の会社に行くから大丈夫だからね」


つきこさんと知神君は何か隠している。


今日の、内緒でQ工業高校の手伝いをしたのも気を紛らせる

ためなんじゃないかと、僕は睨んでいる。


「秀行君、イサさんあれから稽古に1回も来ない。もうあと3日で

12月なのに。社長としては【捨ててしまえ】だけど、同じグループ

Adalheidisの仲間としては、困ってるし何が何だかわからないんだ」


隆君にわからないことが僕にわかるわけがない。


イサさんは一番会う機会の少ない人だから。