なんだよー。さみしいよ。・つきこさんと16歳年上の僕

1995年11月26日(日)辻堂君の電話が終わった。


僕は「餅」と入るためにお風呂をいれようとしたその時


リーン・ベルベルベルベル


「秀行君は長電話がひどいじゃないか」


いや、10分もかからなかった位だよ。


「30秒したらリダイヤルで、かけていたのにツーツーって

もしかしてチケットやさんなの?Hardyの単独公演?」


そんなの和菓子屋さんがするわけないだろう。


「あ、そう言えば、ようかん丸のみしていないよね?」


「さすがに齧る。1日1本以下にするよう鋭意努力中」


「両親が旅行から戻ってきて、色々なお菓子を段ボールに

たくさんくれたんだ。隆君や周りの人で食べる人いるかな?」


「まず、秀行君がお菓子の研究に1週間お菓子で暮らせば?」


何か似たような言葉を聞いたような気がする。誰だっけ。

そうだつきこさんが「1週間お菓子で暮らせる」とついさっき。


「僕達2人だけじゃ食べられないんだよ。隆君にぜひもらって

ほしいんだ。母が【ひでさんの好きなお菓子だけ食べて、他の

人に残ったのをあげてはいけません】だって。怖いのよ」


「もらうー」


「佐粧君にって言ってたから、中には美味しいのがあるかもね。

手を付けないで水曜にでも会社に運ぶからね」


「どんなのがあるの?」


「かぼちゃのパイとか、干し芋とか、個包装のリンゴのお菓子、

野菜のクッキー、ひもを引っ張ると熱くなって食べられますって

書いてある、はんぺんのお化けみたいなのとか」


「今日、僕が取りに行ってもいいよ」


昨日来たんだから来ないでよ。


「さっき、お話し中だったわけだけど」


「うんうん」


「辻堂君て覚えてるよね?」


「結婚式場のカメラマンになったら、奥さんがKYOのファン。

またKYOに似ている僕に会いたいとかじゃなかったっけ?その後

どうなったか知らない。でも辻堂君は高3のクラスメイトだった」


そう。あの後、カメラマンとしては隆君はあの式場を避けた。


「辻堂君は国語教師でしょ、今Q高校にいるんだよ」


「知神のいた高校だね。あそこ軽音楽部は前も言った通り

なかなかすごいんだ。1人としてプロは出ていないけれどね。

とうとう華のある知神が出たと。それで?」


「知神君は高校の時は地味で真面目で、目立たない様でいて

成績張り出されるとずっと1番だったって。頭いい子は大体

いじめられないのに、3年間無口で、地味だったって」


「地味にしないと顔が優しくて可愛いいから目立ったんだろ」


高校生の時は幼くて今より可愛いが勝っていたんだろうな。


それはそれで、そうだと思うけれど。


「話はその延長線上で、まだ確認は取れていないんだけれど

現在のQ高軽音楽部にギターの上手い3年がいて、進路をまだ

決めていない子がいて、辻堂君が心配しているんだよ」


「それは、僕に何かをしろと?」


「いや、今から入れる専門学校で評判のいいところとか

ないか教えてもらえたらって。高校教師よりプロの考えが

知りたいらしい。親は専門学校や短大希望だって」


「それは、その子のレベルによると思う。本当に上手いなら

どの音楽スクールでもプロになるよ、いずれ。だけどねー。

フリーターになりたいって何か隠してるね」


僕もそんな気がするんだけど。


「もうバンド組んでライブハウスに出たりしたことがあってさ

何か手応え感じてるとか。まあいいけどね。見に行く位」


僕は担任が休みがちで、その子が実は何か話したいことがありそう

とか、僕達の年齢の人間に聞きたい?教わりたい?ことがどうも

ありそうだと隆君に伝えた。


「あらま。お兄さんにお話ししたいのに環境がないんだ。

えーと、その担任は何の先生かまず調べて、英語か地理・公民なら

どうにかなる。人手が足りないなら自習監督に使ってもらおう」


「何言ってるの?臨時教員だって半年とかなのに、1日だけ

高校の先生になんてなれないだろう?あと、何よ、地理公民て」


「秀行君が入り込んでもいいじゃん。生徒はね、先生じゃないと

警戒するよ。僕がいつものスーツで正門にいて彼を捕まえたら?」


誘拐と思う。事務所(色んな違う意味で)に連れて行かれる。


「まあいいや。辻堂君の電話番号そのままだね。

やっぱり楽器は聞かないとアドバイスも何もないし。また明日

お菓子の件とまとめて電話するからねー」



隆君、ついさっきまで「偽教師」になろうとしてた。

僕まで巻き込んで。2人共教免はあるけれど。