2:秀行の和菓子屋さん・つきこさんと16歳年上の僕

1995年11月25日(土)今日は2人のお店に珍客現る。


僕の父と母が商店街の仲間と旅行へ。土日は父と交代で

菓子作りで僕は土曜休みだが、今日は出勤。


ダメになるかと思われていた旅行だから、楽しそうな父母。

どうぞ行ってきてくださいな。つきこさんがお店の方に

出てくれている。午前中は3人。その1人が!



「たくさんお買い上げありがとうございます。なんかその着物

高そうで見ていて怖いよ。まさかようかんも切らないでそのまま

食べてるんじゃないよね?」



「ようかんは齧ればいいでしょう?袋は切らないよ。上の所を

ハサミで切れば、袋からニューっと出るよ」


やっぱりそういう食べ方の人っているんだ。


「もう午前中は終わったから、僕の家の伝統の昼食を食べて

行く?これは人によっては悲しくなるかもしれない」


「食べるー」


やっぱり隆君だ。



「佐粧さん、今日は佐粧流のお稽古?お着物ステキです」


「師範て言っても、毎日スーツにネクタイだと着物の着方を

忘れちゃうから」


それは明らかにウソだ。男性に袴を着せ付けられる人間で

着物の管理(舞台で着る)もする人間が、何を言っているんだよ。



「呉服屋に帯がマジックテープになってるのあったんだけどねー

激しい踊りしたら取れそうで。取れないみたいだけど。あれはね

たぶんデートとかに使うには便利だよ」



昔の人は作り帯(男性用も女性用も)結構使っていたって聞く。

町の人がみんな着物だったから、当たり前にあったんだろう。


でも「跳躍」が売りの隆君、じゃなかった佐粧流の香隆先生だと

バレエダンサーの様に飛んだらほどけるか、はずれそうだ。



「社長が自ら稽古って、まだ生徒いるの?」


「末竹と、知神。月2回45分。でも1回1時間半位になっちゃう」


それは。Adalheidisの不思議な踊り研究会に見えると思う。




「はい、お母さんに教わりました。わたしはラップを使って

作りましたが。これがここのお昼です」


「あ、確かに聞いていた通り大きい。でも3個だし食べられる」


「隆君、おかずないんだよ。塩結び3個。ここで僕は今日だけ

ズルをしました。はい、豆腐とわかめの味噌汁」



つきこさんに塩結び3個なんてかわいそうな気がしたんだもん。

(ちなみに海苔も巻かないんだよ)


「秀行さんが内緒にしてくれるならR30ふりかけも海苔も使えます」


「内緒にしよう。お客さんもいるし。いや、兄上か」


じーーーーーんという胸の音が聞こえてきたような。変かな?



「僕は今日、昼なしか、しけったせんべいに、水出し麦茶の

予定だったよ。ご飯とお味噌汁が飲めるなんて素敵な職場だね。

3個目はふりかけも使おう」


こんなところに遊びに来たから時間が減るんじゃないの?


しかしカフェテリア(安い、うまい)を作ったのに何で隆君が

食べられないんだろう?初代社長なのに。


「どうして佐粧さんはあんな立派なカフェテリアがあるのに、

執務室から遠くもないのに、お昼ご飯食べられないんですか?」


立派ではなくお洒落だが食堂。だが、僕も知りたい。



「あのね、姫。前は青井だったけれど今は高柳が鬼なんだもん。

午前中に例えば9時から始めたら、内容は別としても4時間で

お昼でしょ?だから僕は朝は6時とか7時に仕事スタートする」


まあ普通の会社の人の1日分の働く時間に近くなるね。


「7時間分の仕事したら【来週、収録に行けません。7時間

あるんだから、ここにいない日のことを考えて1時間で2時間

働いてくださいね】って、資料とか色々運んでくる」


無理だよ、ああだからそれをやれたから初代社長なのか。


「そうすると電話がかかってきて、昔良くしてもらった方の孫

の結婚式とか知らない人だけど、知ってる事務所の偉い人の通夜

と葬式とかさー」


そういうの大切にしないといけないんだね。


「午前10時頃、もうお腹が空いてきてね、朝に食べようと思った

パンをかじっていたら【12時からお客様です】とか【会議です】

とか。僕がいる時間だからだって。他の人は早く昼食食べてるの」


なんとなく泣きそうなのがおかしい。

何でも食べられる人なのに。山海の珍味とか。野菜も肉もね。


隆君はお腹に温かい物を入れて落ち着いたみたいだ。


【だから、夕方にようかん1本かじっても仕方ないの】と言う。


仕方なくないと思うし、ちょっと止めたい。