1995年11月3日(金)なぜ僕の実家に隆君と知神君が!
僕の実家とは言っても、本当はつきこさんの実家だ。
「暗室片づけて、知神を迎えに行ったの。あーホカホカの
おでんが食べたい、そうだ、知神を送り届けてから秀行君の
近所のスーパーで買って、とか思っていたらね」
ここに来ちゃったんですか?
「リーダーがぼくをここにつれて来たんです。リーダーのお宅で
作るなら、ロールキャベツかなってカゴに材料を入れていたら
同じものを3倍位持ってきちゃう。ここに来たかったんですね」
「秀行君の家と間違ったの。2人共疲れていたんだよ。ブライダルは
撮り直しできないし。知神君はラジオの録音に、新しく来たハガキを
読む部分を付け足して、午後11時から午前1時まで生放送だもん」
そう、間違ったの?お腹を曲げるほど笑える無理なお話。
「バスの始発が出るまでお茶でも飲んでるの、何ともないですし。
文庫本があれば、読んだり。あとはボーッとするのが楽しいから。
ぼくタクシーの運転手さんに気を使っちゃうんです。貧乏性ですね」
気持ちはわかるけれど、知神君が公共交通機関を使うのは、もう
かなりの無理があると思うし、タクシーだって稼ぎ時だ。乗って
くれたら嬉しいだろうし、チケットは隆、いや佐粧社長が出すだろう。
知神君は昼寝したほうがいい。30分でも。
昼食後、つきこさんの部屋だった場所に知神君と行くと布団が
敷いてあった。知神君お昼寝用だね。カーテンも色が濃い。
湯たんぽは火傷したら困るからとつきこさんが出した。
かけるものが足りなくて寒い時用に、すぐそばに毛布があった。
つきこさんのお母さんが湯たんぽを入れておいたみたいだ。
知神君はゆっくり崩れるように眠りに入った。
靴下と上着がきちんとたたんである。お風呂場を借りて冷水で
足も洗った様だ。ROSSKASTANIEの天使(ギタリストだけど)は
お行儀の良い子だ。
隆君も仕事場に迎えにいきたくなったんだろう。
度胸があるのに繊細で、隆君が他の職業から強引に?スカウト
して、まだ3年たっていない。2年か。可愛いのだろう。
「お母さん、あの、ここQ工業高校って近いですよね?何か
知神に変な過去でもあったんですか?」
なんで隆君が僕のお母さんを(いや、本当は義母だけれど)
お母さんて呼ぶんだろう。おでんは美味しかったけれどはんぺんが
大鍋の1/3なんて恐ろしいおでんは初めて見た。
知神君のロールキャベツはもう少し煮込むみたい。
「2階のつきこの部屋だった所なら、ここからは聞こえないわね。
知神さんは何も悪くないのよ。あれは陽(みなみ・つきこさんの兄)
が小学校高学年だったかな。知神さん誘拐されたの」
それは、噂にもなるかもしれない。