異国のお土産をありがとう・つきこさんと16歳年上の僕

1995年10月23日(月)トランク1つ引っ張ってきた隆君。


「あー、おうちにたどり着いた気分」


もう突っ込まないけれど、違うよ。隆君の家の方が10倍位

広いんじゃないか?1人暮らしのマンションなのに。


佐粧隆。ロスカスターニエ社社長。出張から戻って来た。


(音楽会社。普通は事務所と言うが、会社で納得する規模。僕なんて

みたこともない様な、声楽の人や、コーラス、バックバンド等

すごい人達が所属しているらしい。だから社員もたくさんいる。

だが、自分の会社の所属アーティストとして顔が知られていて

稼ぎ頭なのは、佐粧隆だ。僕は隆君と呼ぶけれどね)



「これは2人の実家と分けて。カラフルでしょう?これねー

ほうれん草とか赤いカブで色付けてるらしいよ。ちょうちょだ」



パスタ。なんだっけ、これ。



「ファルファッレだっけ?こっちの貝みたいのがコンキリエ?」


「日本語発音ながら秀行君は物知りだね。いや、シェフなら

当たり前だ。この四角いのはわかるでしょ?」


「ラザーニャ。わーミートソースのラザニア作ろうかな?」



「僕もよんでくれないと怒るよ」


10袋位、僕の家にくれた。重かっただろうな。



「姫、こっちおいで。これオーガニック化粧品。とは言っても

普通のドラッグストアに売ってる様なもので、普段用なんだけど、ほら

色がびっくりでしょ?これ開けたのは僕が使う。姫のは別にある」



僕が使う?4人バンドでは確かに顔がわからない人がいる。

それが隆君(リーダー)なんだが。


「僕も見たい。うわ、キレイだけど鮮やかだね」


色彩感覚が日本と違うのかな。


「これさ(指で5、6回アイシャドウをこすり自分の手の甲につけた)

すごい発色がいいよね。メイクさんとしての僕は面白さに負けた」



写真家と社長とアーティスト以外にもまだ働きたいんだ?



「鮮やかなのは、この色でお外を歩いても平気だからですか?」


「値段的には割と低価格の化粧品。でも使う人が多い。向こうは

テラコッタ、素焼きの壺みたいな肌色が好きな人が多いみたいで

肌に濃い色のせてからメイク用品使うからかな?太陽も違うし」


「見え方が違うんですね。服選びも関係してきますね。面白いな。

日本では化粧品は、薄くつくと安心する人が多いのに」



「そうだよね。確かにお日様も関係してくるね。姫の場合濃い色でも

薄く出来るから、自分で遊んでもいいし、仕事のキャリーカートに

いれておいてもいいよね。はい、パレット」


何?なんか悔しいんだけれど。話の内容かな。



「ありがとうございます。わあ12色にチップとブラシまでついてる」



「今日さ、寺井君にあげようとしたら、最初は【これ絵具かい?】

って聞かれて、その後は【わたくしの郷里で使ったら、まず1年は噂の

種になる】とか言われて。それでも受け取るんだ。4色セットにした」



アハハハハハハ



「ビックリしたー。知神がいるのかと思った。あいつは以前は声を

出さないで我慢したり【ぼくは静かにしなきゃいけない】ってなんか

張りつめていたから本物が笑うのは歓迎なの」


僕は笑うことを許されないのかな。ひがみ?



小田巻蒸しが出来上がった。「ス」も入っていないいい感じ。


「隆君、食べたりなかったら生姜餃子のスープ、すぐ作れるよ」


「ありがとう」


「ご飯が良かったら、お握り夜食に小さいの握ろうか?」


「食べたいー海外で別に日本食食べなくても平気な体なんだけど

今回帰り飛行機で寝たら、ご飯食べ損ねた」



日本食が恋しいじゃなくてお腹が空いてるってことだね。ふーん。



「何で!茶わん蒸しにうどんがいる!美味しいー。ホッとする」


この家に来ると確実に幼くなっている。「うどんがいる」って笑える。


「写真持ってきたの、その封筒。パンフレットの白薔薇とか。

知神と姫のはいい。2人共視線がバラバラだから次会えるのなんか

いつだかわからないって感じにしてみた。まあ白薔薇がそうだけど」


いい写真だなあ。白黒で。知神君がつきこさんの手に肩をおいても

いやらしくないし、つきこさんは違う方向を見ている。


いつの間にかみんな食べ終わって、テレビの前のソファへ。


「姫、さっきの封筒、例のものがあるよ。僕は今日、会社にいる姫に

仕事中にアイスティー作らせてしまったから、1つお願いを聞くよって

メモ用紙やり取りして、ドキドキしちゃった」


アイスティーでお願い聞いてくれるお客様の来る職場。いいなあ。


「隆君、時差にもやられないで頭は回ったんだ?」


「うん。メモは漏れない。執務室から持ってきたよ。高3の秀行君を」


意味が分からないのですが。



「わあ、絵本みたい。王子様可愛いなあ。女子はかまいたくなるー。

白雪姫には申し訳ないけれど、継母の佐粧さんの方が美しいと思う」


「僕もね、当時そういう雰囲気があって白雪姫に悪かったなって。

だけど絵本でも童話でも白雪姫は馬鹿だし。そこを演じられる女子は

上手だったよ。バタバタしている時期だから難しいもの選べないしね」



確かに。ただ、鏡も「継母」を応援しただろう。凝った衣装で継母が

主役みたいだった記憶はあるよ。継母が可哀そうに思えた。


まだ大人になりきってはいない中性的な部分もあったし似合って

いた隆君。女子が苦手だからって女性役やる発想は僕にはなかった。


ただ、隆君が【白雪姫】やるには背が高かった。既に今と同じ身長。

だから継母をやった。全力で。



高3の演劇発表会で、カボチャパンツの下に白いタイツをはいて

終了後にバスタオルを持って泣いた僕だ。マントと王冠はそこそこ

良く見えたけれど高3の出し物としてはさみしかったかな。



今はもっと変なことしている様な気がするから、もういいや。


月曜日、夜の9時5分、隆君と知神君とつきこさんと僕は

セリフなしのドラマに出ている。11回早く終わればいいのに。


お握り作っておこう。つきこさんも準備を始めた。