ちょっとお話がしたいの・つきこさんと16歳年上の僕

1995年10月23日(月)休憩時間(昼)に電話があった。



「お店にかけてごめん。母上に謝っておいて」


「いつ帰ってきたの?」


「朝、成田に着いた。明るい時出発して朝着いちゃうんだよ。

働かないと怒られるからそのまま会社。飛行機では寝てたよ」


「お疲れ様」



乗り継ぎ便でイタリアのミラノに行っていた佐粧隆。

ROSSKASTANIE(音楽会社)の社長で自らも所属アーティスト。



高校2年で知りあって大学は同じ(だがすれ違い)、その後は

38歳で再会、年中会っている気がするから親友なのかな?


大人になると友達は作りにくいんだよね。



「お土産と、パンフレットの写真まだ渡していなかったから

帰りに寄っていい?秀行君の実家にもお土産はあるし」


「何時頃くるの?」



「7時半でどうでしょうか。ドラマ見たら帰るからー」


「ハーイ。了解。じゃあね。ご飯適当なの作っておくよ」


「お兄ちゃんもお家でご飯早く食べたかったよー」


無視。1ヵ月誕生日が早いからお兄ちゃんて何?7時半ね。



「母さん、隆君イタリア出張から帰ってきて、母さんにも

お土産あるってさ。明日持ってくるよ」



「他に渡すところもあるでしょうに。頂いていいのかしら」



「僕の夕食よく食べていくからお礼じゃないの?」



「だって、ひでさん毎回、お野菜とかお菓子とかもらってる。

この前もうちにまで白菜とリンゴ頂いたじゃない。佐粧君と

つきこちゃんには美味しいもの食べさせないと逃げられるわよ」



お土産もらえる話から僕が注意されるなんて、理不尽な気もする。



材料はあるから小田巻蒸しでも作ろうか。歯ごたえのあるものは

つきこさんも月曜日だし疲れるだろう。隆君も。日曜につきこさんが

作った常備菜で野菜も取れる。



昼食後はお茶の先生が定期的に買っていくお稽古用の少し大きめの

干菓子。これは僕はきれいに型抜いて早く作るのが60代の熟練の方と

同じ位だと自負。乾燥させるからその日のうちには出来ないけれど。




帰宅したのは5時。

小田巻蒸しもあとは火を入れるだけの時刻、6時40分頃につきこさんが

帰宅。今日もちゃんと帰ってきてくれて良かった。それは本心だ。




「秀行さん、今日ね、佐粧さんがうちの部署に来たよ。正確には

企画課の方に。佐粧さん、冷たい紅茶下さい、お菓子はみんなに

チョコレート持ってきたよーって。給湯室にわたしは行きました」



「冷たい紅茶、紙パックのとかないんだ?」



「あるある。でも「濃いのがいい、眠気がーって」コーヒーだと

人が飲んでいるのはいいんだけど自分は嫌な思い出があるって言うし

少しお時間かかりますよって、ティーバッグ5つで出して氷に注いだ」



その間どうせ寺井君としゃべっていたんだろう。遅くていいよ。



「他の人は誰もいなかったの?」



「4月に入った22歳の大卒女性は来月辞めるからかお客様は無視状態。

余裕がないかも。転職決まってないって。バイトの23歳男性は小林さん

が教育係。でも普通濃いアイスティーなんて知識、必要ないものねー」



確かに趣味とか嗜好品の問題だものね。



「他の人達は会社内で必要なもの描いていたり、都内出張に必要な

物を2人組で買いに行っていたり、わたしはショーの小物を縫ったり

帽子に造花を組み合わせたり。そこそこ忙しかった。期限あるし」



そんなところに行く隆君も悪いね。



「だけどわたし皆にROSSKASTANIEのことは徳浜主任に任せておけって

なぜかなっているから。佐粧さんドンみたいなマフィアスーツだったし

女性は某映画見ていなくても、なんか怖かったよ。それが狙いかな」


女性によってきてほしくないから?

単にいつもの好みが出ただけでしょう。隆君の理想の社長は、それ。



「でも、38粒位の口にちょうどいい大きさで休憩にみんなが喜びそうな

チョコレートの箱、わざわざイタリアから買ってきてくれて。なんか

帰りの荷物重かったろうなって。アイスティーに干菓子そえちゃた」


「つきこさん、そんなことしたら隆君喜んじゃうでしょ」


つきこさんのファンは少ない程僕が把握しやすい。


「秀行さんの作ったのだから喜ぶだろうと思う。だからおすそ分け」


つきこさんはまた変装して店に買いに来ているのだろうか。

会社鞄に、お守りのように入れてくれているのは嬉しいけれどね。

僕に頼んでよ。お店を(作業場も含め)神聖視しすぎているのかな?



ピンポーン。


まだ7時じゃないか。



「ただいまー。帰国しましたー」



中位のトランク1つ持ってる。それで出張はしないと思うから、中は

全部お土産とか?まさかね。