あやしいのは誰でしょう・つきこさんと16歳年上の僕

1995年10月18日(水)帰宅前に食料買い出し。我ながら体力はある。


夕食は生ラーメンと手作り生姜餃子。(皮は買ったけれど)


つきこさんの常備菜の白菜の甘酢漬けも食べよう。



「ただいまー。秀行さんお稽古お疲れ様」


「おかえりなさい。僕は元気だよ」


「お顔がさみしそう。わたし、目で大根齧らないとダメ?」



ウハハハハハハ。大丈夫だよ。



「あのギターは別に普通のギターだったよ。ペイントは特注。

お化けでも何でもない、可愛い柄のギター。濃い水色にケーキや

キャンディーや、ドーナツとかの絵が描いてあったよ」



「女の子受け狙ったのかな、佐粧さん」



「違うと思う。遠くのお客さんには見えないし。もしかしたら

自分が食べたいんじゃないのかな」



「秀行さんは絵に描いた餅で満足できる?」


「うーん。食べられないとき見たらイライラするかもね」



僕はそうだ。隆君の考えはよくわからない。でも可愛い音だった。



餃子を焼いて中華麺を茹でてハムとカイワレとメンマと海苔の

ラーメンを作る。つきこさんは小皿と酢と胡椒、ラー油、箸に

醤油を食卓に出してくれた。僕達は仲良しだと思う。



「胡椒と酢のタレって美味しいねー。あ、餃子が美味しいからだ」



やだなあ。つきこさんてば子供みたいに喜んで食べて。

朝から会社で主任さんしていた今年25歳とは思えない。可愛い。



もしかして、隆君が【美味しい餃子のお店】につきこさんを連れて

いったら、この家を出て行くのではないだろうか。



「つきこさん、隆君がもっと美味しい餃子食べさせてあげるよって

言ったらついて行っちゃう?」



「佐粧さん?それ想像とか妄想とかの話?」


「そうだけど、仮に食べに行こうって言われたら?」



「秀行さんも一緒でしょう?」


「ううん。僕がいない時に」



「えー、それなら行かないけれど、何で?」


「何でって特に意味はなくて。僕が安心しただけだよ」



笑っているつきこさん。最近僕は子供のように

もし、なんとかだったら、みたいなことを考えすぎている気がする。

そして嫉妬するのだ。それで胸が痛くなる。頭悪いにも程がある。



「今日ね、イサさんと久しぶりに会った」


「わあ、デルハの本物のベーシスト。お顔は治っていた?」



つきこさんの中では隆君(リーダー)は偽物ベーシストなのか!


確かにベースがどんなに上手くても、イサさんがAdalheidisの

本物ベーシストだ。そういうことなんだよ、隆君。



「うん。痕とかなかったよ。それは良かったけれど、今猫を3匹も

飼っていて、腕とかすごくひっかかれていた。痛そうだったなー」


「3匹はお世話が大変ね」



「飼い主さんがみつかるまでのボランティアだって。でも3匹が

引き取られたら、また次の猫のお世話するみたいだよ」



「イサさんが可愛い可愛いって思えたら、免疫力アップかも」



つきこさんには言えないけれど、あんまり顔色は良くなかった。

これに関しては栄養不足とか睡眠不足かもしれないけれど。



責任感のある人だからちゃんとお世話はしているみたいだけれど

僕には猫好きには見えなかったよ。



「僕はイサさんの家で3匹は多いと思ったよ。余計なお世話だけれど

1DKに大人2人と猫3匹はなんだか色々と大変そう」



「ロフトベッドとかついてるのかな?」



「確か、隆君が【ご飯食べたところを片付けたところに、2人分の

布団を出して敷いて寝る】って言っていたからロフトないと思う」



「宅建の秀行さん、それじゃあ1DKじゃなくてワンルームみたい。

1DKって小さくてもご飯食べる場所と寝る場所がある気がする。

でも押入れがあって広いのかも。楽器置き場作ったとか」



宅建、頑張った割には頭に残っていない。つきこさんて

かなり鋭い。読書は僕以上に好きかもね。



「イサさんのことより、秀行さんの宅建を受験するときの

実務経験はどうしたのか気になって仕方がない。忙しいのに」



「えーと、それは大人の事情でちょっと。不正はしていないよ」



「あとはね、佐粧さんの不動産鑑定士も司法試験みたいに修習

みたいのあるでしょう?どうやって時間をひねり出したのかな」



「何か怪しいとは思っていたけれど不動産鑑定士だったとは。

寝なかった時間とか関係しているのかな?」



「あれ?秀行さん知らなかったの?」



初耳だ。隆君だけで商社やれそうだ。