リーダーであるということ・つきこさんと16歳年上の僕

1995年10月13日(金)ただ、ただ、話を聞く。たまに何か言う。


隆君の布団を左端に、僕が右寄りの真ん中、つきこさん僕の側。


ここの家のお布団は軽くて暖かい。



「いつも誰でも泊まれるように用意してあるのに、あんまり

みんな来ないんだよ。世間ではリーダーじゃなくて佐粧社長の

家に招かれたとか、そういう目で見るのかな」



それだと所属のミュージシャンはゴマすりとか、贔屓されてるって

思われるのは嫌だと思うけれど。そこまで気にするのかな?



「知神と末竹は12月のこともあるから、たまに来るよ。ただね

この前、寝る前に知神に昔話読んでもらったの。知神って笑うね。

傘地蔵読んでもらったら、末竹が怒っちゃってね」



知神君の声をラジオの向こうで待っている人がいるのに?


昔話を読ませると言うのは何で?知神君、昔話代金もらわないと。



「【どうしてリーダーは手拭いの地蔵に傘を買ってやらないの?】

って言われても、僕はどうしたらいいんだよって思うでしょ?」



「末竹君は正義感強いからね。傘と手拭いじゃ冷たさも違うし

可哀そうに思って、なんとなく言っただけでしょ」



「そこでだ。知神が笑ったんだ。アハハハハハハハって。またさー

ややこしいことにその声が秀行君に似ていてドキッとした」



知神君と笑い声が似ているなんて、僕は光栄だ。

しかし、泊りに来る人に眠る前に昔話ねだると誰も来なくなるよ。



「末竹と知神をお店に連れて行ったのは知っているだろう?」



「末竹君はお姉さんのおかずやお菓子の荷物のお礼、知神君は

夏にお土産をくれた女性会社員にお礼したいとかだったよね?」



「店長が買い付けてくる、雑貨のセレクトショップだ。輸入品も

国産もある。末竹のはすぐに決まった。泣けちゃうよ。お兄さんと

義理姉さんにお茶碗と箸1組ずつ。そこそこいい、お高いの」



「実のお姉さんじゃなかったんだよね。お兄さんが喜べばお姉さんも

喜んでくれるものね。うーん、なんか優しくて切ないな」




「お姉さんが嫁いできたのは18歳。末竹は5歳。幼稚園のお迎えから

おやつ、着替えまで面倒見てくれたって言うし、お姉さんが初めて

ドロップドーナツ作ってくれて、感動で涙が出たってさ」



熱々のほくほくしたのは美味しい。スプーンで落とすんだ。



「知神はね、負担にならないのはわかってはいるけれど、消え物は

絶対に渡したくないんだって。例え趣味が合わなくて誰かに

あげてもいいから、残るものがいいって頑固だったの」




「そんな。知神さんに何かもらえたら百円ショップのものでも

家宝にしますけれどね。その女性、わざわざお土産渡しているんだし

知神さんにしては珍しく受け取っているのに、なんかさみしいなあ」



やっぱり片思いなのかな。僕はそんな話も何回か聞いている。



「でしょ?姫だっておかしいと思うでしょ?結局、知神はクリーム色に

細かい薔薇と緑の葉っぱの入った、僕が見てもおしゃれで捨てたくは

ならない化粧ポーチを選んだ。もらったお土産の5倍はしそうだ」



相手がくれたのは5、6百円の饅頭とか冷蔵庫のマグネットかな。


キーホルダー用マスコットや、ボールペンかもしれない。




「まあね、3千円なら。お礼って考えて、今後もよろしくって事なら

いいんじゃないかと。知神の感覚は正常だ。今は5万とか使えるんだし。

ただね、秀行君に姫よ。相手の女性の気配が全くしないんだよ」



「色々あったから、慎重に動いてるんじゃないの?」



「僕としては幻覚とか、詐欺を心配しないといけないんだ。もちろん

やだよ、こんなの。2人仲良ければ別にいいんだよ。知神も35歳だし」



そういうことね。幻覚はないでしょう。怪しげな人には近寄らない

慎重な知神君。深い帽子で安売りのスーパーにも行く。変な人に

貢ぐようなこともないと思うよ。



所属の人の恋愛に口は出さなくても背景とか相手のことは

何かのために知っておかないといけないの?神経休まらないね。



「じゃあ、秀行君は今日は【あかたろう】読んでね。日本文学全集から

昔話のやつ3冊買ってあるから。47都道府県分、あるんだよ」



まあいい。明日の朝は根こそぎ冷蔵庫の物食べてやる!