よその家の話、僕の考え・つきこさんと16歳年上の僕

1995年10月13日(金)食事後、隆君の車で隆君の家へ。



つきこさんも連れて来て良かった。1人にするのはせつない。


久しぶりの隆君の家は広い。きりんが飼えそうな天井。


僕達は板の間に布団を敷いて体を伸ばした。ああ、広い。



ホテルの部屋よりここはゴロゴロするスペースがある。

奥にはグランドピアノがあるんだからスゴイよ。



「なんか飲む?」


「その高そうな天然水サーバーからお水を下さい」


「わたしもいただきます」



「僕も。弁当の味が少し濃かったね。店の方は相当高いけれど

期待できそうもないな。普通の弁当が1番いいのかな?」



その普通の弁当だって、有名人の憧れなんでしょう?



「ちょっとプライベートなこと聞くけど【失礼だ】とか思ったら

答えなくていいから。姫の意見も欲しいんだ」



何だろう。



「秀行君は子どもほしい?」



「いまさら?だって僕は無理だもの。僕の家はこうのとりが

通り過ぎていく家だよ。僕の代で和菓子店もお終いだし」



「姫は?」



「今は元気に見えるけれど、わたしは昔子どもの頃から体弱くて、

病院に入院したり。わたしと似た子が来てくれても自分の親みたいに

面倒見られないって昔から思っていました」



「僕も生まれつきで、こうのとりは来ないし、自分も子どもだった

のに苦手でさ、子ども。だからよその家のことはわからないけど。

ここだけの話になるけど、イサさんの奥さんがちょっとね」



ちょっと何?イサさん僕や隆君より1つ下だから40才だろ。でも

確か奥さんは年上だった様な。



「急に子供が欲しくなったとか、そういう話?」



「そうみたい。こちらからかけ直してもあまり長くは話せないし

そんなに知りたくもない。ただ、奥さんは自分の子供は無理だから

遠縁かなんかの赤ちゃんをもらってこようって」



「赤ちゃん?夜中のミルクとかおむつはどうするんだろう。

疲れた時、お世話してくれる人は雇うんですか?」



「姫、そこだよ。イサさんの家は1DKだか1LDKなの。泣くのが

仕事の赤ちゃんが泣くと、イサさん眠れないの。最近は奥さんが

花屋さんの同僚の、1歳児を借りてきて、練習してるんだって」



「練習って子育ての?」



「そうじゃない?その同僚だか仲間だかよくわからないけれど、よく

他人に子供貸すよね。ご主人と遊びに行けるって喜んでるんだって。

またその子が夜中に泣いたり。なんか食べたくて泣くらしいんだ」



うわー。僕には無理。赤ちゃんのお世話なんて、本当は年だけ食ってる

大人で中味は高校生だからなのか、心労で倒れそうだよ。



「イサさんの家ってそんなにコンパクトなの?」



イサさんのことに関しては僕はあんまりよく知らないんだよね。



「だから、台所の床からつながった8畳位の所でご飯食べるわけ。

夕食後にそこを片付けてから布団敷いて寝る。台所の水道の横に鏡が

あって、歯ブラシの入ったコップもシンクの隅にあった。火口1個」



2人にとっては、離れがたい物件なのかな。




「勝手な想像ですけれど、仮に赤ちゃんが来たら、赤ちゃんの物って

結構ありそうだけれど、お引越しの予定なのかな?」



「姫だってそう思うでしょ。イサさんはね、都心の3DK借りられるし

23区からちょっと出たら1軒家だって現金で買えるはずなの。でもね

贅沢禁止。奥さんの夢はレストランライブハウスだからね」



「じゃあ、子供連れてきちゃったら可哀そうじゃないか。栄養不足とか、

お菓子買ってもらえないとか。公立だって中学高校お金かかるのに」




「秀行君もそう思うでしょ。僕はお腹すいた子を見るのは嫌なんだ。

大人でもね。僕は小学校の時、おやつにお握りとかは作ってもらえ

なかったけれど、カステラと牛乳に助けられた。父が果物をむいて

おいてくれたから、そういうのもよく食べたし」



僕は祖父にどら焼き貰ったけれど、カステラはなかったな。

カステラと牛乳はしゃれている、僕も、あと背が2㎝伸びていたかも。



「ただね、いくらイサさんが少し気が弱くて奥さんに優しくても

よその子を1晩ずつ数回預かっただけで、体調がひどく悪くなるから

とうとう一昨日当たり【音楽が出来なくなる】って言ったらしいよ」



「奥さん、遠縁の人の赤ちゃん、あきらめたんじゃない?」



「なんとかね。だってよそのお子さんの面倒だってイサさんが

みていたって話。収録どころか、稽古にも来られないね」



よそのお宅の中はこれ以上知らない方がいい。だけどどうしていつも

イサさんの奥さんは、イサさんに対して強引だったり、イサさんを

見下したりするんだろう。音楽が出来なくなったら奥さんも困るよね。



「話してスッキリした?イサさんの体調は眠って食べたら回復に

向かいそうだけれど」



「たぶんね。車も売り飛ばされたんだ。乗せてもらって車酔いでもね、

運転する側にまわれば、大丈夫なはずなんだけど。もしかして僕よりも

栄養バランスの悪い食生活じゃないかとは思ってる」



「そこらへんはよその家になんか言えないよね」



「そう。こうやって姫と秀行君に聞いてもらえたらいい。末竹は

イサさんより10歳若い。知神は5歳若くて新メンバーだし。まだね

彼の複雑な事情は知らなくてもいいかなって」



これで眠れるかな、隆君。(リーダーだね)



「でさー、あと1つ」



まだあるのか。僕を真ん中にして布団に寝そべる3人。


その布団は、非常に転がっていて気持ちよく、掛布団は薄い。



「知神のことなんだ」