2人でいいことばかり考えよう・つきこさんと16歳年上の僕

1995年10月12日(木)つきこさん帰宅。食後のお茶。


「はるちゃんが【Mさんを実は好きで好きでたまらない】とか

そういうんじゃないなら別にいいの。この家に来た時も何だか

幸せって感じじゃなかったし」



もう家族からMの正体を聞いていたのかもしれないね。



「僕は一気に距離を縮めようとして嫌われたように思える。

木場さんには可哀そうだったけれど、Mは信用できないもの」



ごく最近コーヒーショップもやめて非常勤の保母さんか。



つきこさんの友達、陰ながら応援しよう。あのコーヒーショップ

怪しい業界の人が来そうで、微妙な感じがする。


珈琲も菓子もまずいのに高くてウェイトレスが可愛いってねえ。


おまけに26歳で引退だか退職って薄気味が悪いよ。




「で?秀行さん、何か隠している気がする」



「これから話すけれど。金曜の夜、ROSSKASTANIEに呼ばれている。

なんかね、よく訳が分からないんだ。隆君の電話ではパンフレットの

撮影が何とかで。僕は力があるから道具片付けとかかな?」



謙遜じゃなくて頭の中にギタリストの僕は今はいない。



つきこさんはゲタゲタゲタと笑った。



「12月のシークレットライブのパンフレットの写真かもね。それが

あり得ないのなら、音楽スクールの小さい顔写真とか」



「だってアーデル4人いるのにどうして?ヘルプいらないでしょ。あと

僕は和菓子の方が。前回優勝だからコンテストは強制参加だし」



(12月1日はつきこさんの誕生日で、実は夏の旅行でなんとなく

考えていたものがしっくりこなかったから、別の場所に他の物を注文)



「佐粧さんも秀行さんには、言ったつもりで忘れているのかも。今日

Adalheidisのお手伝いに小林さんと寺井次長とわたしが決まったの。

シークレットライブなのにガーベラホール5日間だよー」



ガーベラホールは最大4千人は入る。まあ3千5百人位かな?



「他の女性は?」



「わたし1人だけ。行ける人が2人いるんだけれど、佐粧社長の目が

すごく怖いから、やっぱり無理って。末竹さんを好きな人の方はねー

好きな人は無理無理って言うんだもん。部署は1週間清水さんが仕切る」



佐粧社長、目が怖い?眼鏡かけていなかったんだと思う。あの部署に行く

時は、穏やかなはずだけど、廊下ででも会ったのかな?



「4月になったら清水係長がいるかもね。あと寺井部長。寺井次長は

部長になってもここから動くのやだってわめいていて、通ったという噂」



寺井君はそういう交渉能力は高そうだ。



「つきこさんは他の女性から何か言われない?ROSSKASTANIEに

贔屓されているとか」



「それはある程度本当かもしれないけれど、でも寺井次長が出張先を

決めるわけだから。あと行きたい人は行けるのよ。でも知神さんに

会ったら何もできなくなりそうとか、結局チャレンジャーがいないの」



あー、それはなんとなくわかる。どうでもいい人の方が楽なんだよね。

つきこさんはROSSKASTANIEに頼まれたときは「人間」としか思わない

様にしているみたいだ。男女とか関係なくなっているみたい。



それは僕にとっては安心材料の一つなんだけれど。


だけど、何で僕がパンフレット?そのなぞは消えない。



「秀行さん、明日来いって言われてるの?」



「そう。最初土曜日とか言うから、休みが潰れるって文句言ったら

金曜の夜でいいよって。つきこさんが帰宅してから行くからね」



「わたし明日、早く帰ってくるからね。やっぱり心配なんだもん」



「大丈夫だよ」


とは言ったものの、何着て行けばいいのかもわからない。ジーンズに


バッシュとかでいいのだろうか。


隆君、情報くれなさすぎ。


(秀行は自分も探っていないのを忘れている)