佐粧の結果。寺井とMの報告。

1994年1月8日(土)いつもの電話。それを毎日楽しむ2人も変かも。


「昨日と今朝はどうも。姫にお礼を言ってね。

あわただしく出てきちゃってさ。僕もアヒルをかう」


何言ってるの?疲れてどこか変になったのかな?

アヒルの卵でも必要でベランダで飼育とか?

まあ隆君がオーナーのマンションだからいいのかも。


「なんか変なこと考えたでしょ?アヒルのおもちゃをだよ。

ゆうべ君の家のお風呂におそらく姫が浮かべたんだと思うけど、

あれはすごく気持ちが安らぐね」


「あれはつきこさんに僕がもらったの。可愛いでしょ?つきこさんが

会社にお菓子をたくさんありがとうございましたって」


「寺井君と姫のいるところにだけ贈りたかったから

個人名使ったんだよ。あの仕事結構立ちっぱなしでハードだよね。

混ぜたり描いたりするわけだし。甘いものは欲しくなるよね。

みなさんどれか1種類は食べられると思って。あ、そうだ」


隆君は何かメモしたものを手に持ったみたい。


「寺井君に普段着でお越しくださいの意味を聞いたの」


知りたいよね。結婚式と披露宴に普段着って。


「そうしたら、当日は、花嫁と花婿が1番な服を着るから

それ以外の人間は何着たって普段着になるけけけって」


ああ、そういう意味か。待って、むずかしいよ。例えば

隆君の、おやじ、とか、ドン、みたいなブランドスーツ

花婿のタキシードよりも高いかもしれないよ。


「僕も聞いたんだよ。お値段が花婿より高いスーツとか

色がそっくりのものとか、動物の毛皮はだめでしょう?って」


普通はそうだよね。さすが結婚式、立ち寄るだけでも年間60回の

佐粧隆。会社からとしても、行くのは隆君だもんな。


「花嫁花婿が主役なんだから、気にしないんだよ。たかしはね

ジーンズにスニーカーにパーカーでくればいいもっさー、だって」


「それは、たぶん入り口で断られるよ。あ、もしかしてこれ

寺井君の常識判別会なんじゃないの?」


「秀行君も相当嫌なこと言うね。だけど寺井君の言葉はどうも

怪しくて。来週、もし可能だったらでいいから、姫に探って

もらえないかなあ。僕だけ普通の部屋着で、他の人達は皆が

礼装位だったら恥ずかしくてその場で涙が止まらなくなる」


涙。それは僕も気持ちがわかるよ。

何回つきこさんの前で泣いたかな?結婚前も泣いてたもん。


「ちゃんと頼んでおくよ。僕らも2人で行く予定だし」


「それと、3人テーブルの用意してくれたって。3人で座ろうね。

お箸があるお料理らしいよ。あの結婚式場はホテルとまでは

いかないけれど、結構場所もいいし、変なものは出ないな」


「隆君、寺井君の故郷の料理を食べるのかもしれないよ」


「食べられるものならいいの。あ、そうか味付けか」


「初めて食べるもので凄く美味しいものがあったら、僕は

嬉しいなあ。作り方とか知りたいし」


生きているうちにお食事できる回数は決まっているんだから

知らないことって多いと思うし、美味しいなら食べたい。

手に入る材料なら作りたいよ。


「11日の水曜日、知神君を社のスタジオで囲おう。だってさ

今日も昼過ぎMさん来たんだよ。Mさんの世界観だとさ、知神君

何もできなくても連れていくでしょ、昔じゃなくて今なら」


僕も嫌な想像をした。今のMさん強引だし視点も変だ。


「Oもつれて来たよ。Oの鼻と口元にピアスがあった。

僕ね、体に穴とか苦手なの。別に人のはいいんだよ。でも

自分に置き換えて考えるともう、弱虫さんだしー」


「耳を治療したのに、よく数増やしたね」


「Oはガラスのピアスだった。本人が気に入っているなら

偽物だよって教える必要はない。もう穴がふさがらない様に

なってきたから、プレゼントでMさんにもらったって威張ってた」


Mさんてケチ?ほら、お金持ちだからケチっていうタイプの。

ケチだからお金が貯まるとか。でも某Hとかで買うんじゃ

なければ、ダイヤのピアス位僕だって買えるけどなあ。


「今、秀行君が考えてることわかるよ。Mさんてケチとか

高級ブランドじゃない限りダイヤのピアスなら僕にも

買えるのに、選ばせてあげなかったのかな、でしょう?」


うん、その通りだよ。大正解。


「ちなみにきわのみちに出演する女優さんのことなんだけど、Oは

1番僕の主観では不細工。あそこの女優さんは清楚が売りだからね。

Mさんが無理に無理を重ねて同期の映像に移った人にでも、Oを

使ってって頼んだんだと思う。上手くいってる後輩とか」


なんかトップが道に咲いた可憐な白い花のような女性を好きになって

片思いで泣くとかあったなあ。確かに、色気じゃなくて可愛い感じ。


「清楚?Oさん違うタイプだよ?つきこさんは僕と結婚したからなあ」


「秀行君、姫は姫で、変な人といても染まらない。凛々しい清楚だ。

知らなかった?きわのみちは厳しくなったから女優はピアスの穴も

ダメなんだよ。せっかくOは不細工1号になれたのにね。勿体ない」


え?じゃあもうOさんはきわのみちシリーズ出られないのか。

Mさんが頭下げてチャンスつかんで出られるようになったのに?

でもダメになったのって、それってMさんのせいじゃないの?

ん?つきこさんは変な人といても染まらない?誰その変な人?


「これからOはきわのみち以外のオーディション受けまくる日々だね。

相当しんどいと思うな。来週あたり怖いんだよ。事実がわかるよね」


「もし、翼君がHardy♪って隆君のところに行ったとき、Oさんと

Mさんがいたら大変だね。君の執務室に君といられないの?」


とりあえず隆君と知神君は一緒の方がいいよね。


「Mさん、執務室に来るんだもん。だからスタジオで囲うの」


ああ、そうですか。先輩を立てるって大変なんだね。


「了解。僕は何すればいいの?顔隠しても声でバレない?」


「布越しの声なんて気にならないよ。きのこちゃんも知神君の

側に置くから、先生やって。僕もなるべく抜けて習いに行くから」


きのこ君(末竹七五三次・まつたけしめじ)は知神君の前に

音楽スクールで初心者クラスの講師をしていて、歌手(KYO)の

バックをやってからAdalheidisに引き抜かれた。29歳になるのかな。

優しくて穏やかな子だから、知神君と馬が合うはず。



「ちょっと、エレキギター僕に習う人なんていないじゃないか。

僕も隆君にふりでも教えるなんて恐れ多いよ。みんな違うけれど

みんな上手いもの。なんか泣きそうなんだけれど」



君は邪神から清らかな美青年を守るためにうちに派遣されました。

隆君はそう言い、こっちも泣きそうなんだもんと言って電話を切った。